尖ったデザインとは何か

ブルックリンスタイルが教えてくれる、時代とデザインの関係

「尖ったデザインにしたい」

建物のリノベーションやバリューアップを考えるとき、そのようなご相談をいただくことがあります。
ただ、私たちはその言葉をそのまま受け取って、すぐに奇抜なデザインを提案することはありません。

まず考えるのは、そもそも「尖ったデザイン」とは何か、ということです。

・派手な色を使うことでしょうか。
・見たことのない形にすることでしょうか。
・素材を大胆に使うことでしょうか。
・人の記憶に残る空間をつくることでしょうか。

どれも一つの答えではあります。
しかし、尖ったデザインとは、単に奇抜なデザインのことではありません。
私たちは、尖ったデザインとは「その時代の一般的な感覚から少し外れた選択」だと考えています。

・まだ多くの人が選んでいないもの。
・少し勇気がいるもの。
・好き嫌いが分かれるもの。
・けれど、ある人には強く刺さるもの。

それが、尖ったデザインの本質です。

かつて尖っていたブルックリンスタイル

分かりやすい例が、ブルックリンスタイルです。

レンガの壁。黒いアイアン。むき出しの配管。
古材。ラフな床。工場や倉庫を思わせる空間。

今では、カフェ、ショップ、オフィス、住宅、賃貸物件でもよく見かけるデザインです。
しかし、このスタイルが日本で広がり始めた頃は、決して万人向けではありませんでした。

「古く見える」「未完成に見える」「オフィスらしくない」
「きれいに仕上げていないように見える」

そのように感じる人もいたはずです。

きれいに隠すことが当たり前だった時代に、あえて配管を見せる。
新しく仕上げることが価値だった時代に、古材やラフな質感を使う。
白く整った空間が好まれた時代に、黒やレンガの重さを出す。

それは、当時としては十分に尖った選択でした。

尖ったデザインは、時間とともに普通になる

デザインは、時代とともに意味を変えます。

最初は一部の人にしか受け入れられなかったデザインも、カフェやショップ、オフィスで繰り返し使われるうちに、多くの人が見慣れていきます。

見慣れると、違和感は薄れます。
違和感が薄れると、安心感になります。
安心感になると、定番になります。

ブルックリンスタイルも、まさにその道をたどりました。
かつて尖っていたものが、今では普通になった。

そして普通になった結果、今度は本当に個性を求める人からは、少し避けられることもあります。
「またブルックリンスタイルか」
そう見られることすらあります。

これは、デザインの面白さであり、難しさでもあります。

「尖っている」は固定された評価ではない

つまり、尖っているかどうかは、デザインそのものだけで決まりません。

時代によって変わり、場所によって変わり、
見る人によって変わります。
建物の用途によっても変わります。

同じレンガ壁でも、十数年前の小規模オフィスでは挑戦的に見えたかもしれません。
しかし今のカフェ風オフィスでは、むしろ定番に見えるかもしれません。
同じ黒いアイアンでも、ある物件では強い個性になり、別の物件では既視感になることがあります。

だから私たちは、「尖ったデザインにしたい」という要望を、そのまま形にするだけでは不十分だと考えています。
本当に考えるべきことは、今、そのデザインを選ぶ理由があるのか、ということです。

・その建物にとって必要な個性なのか。
・そのオーナー様にとって意味のある表現なのか。
・市場に対して、どう見えるのか。
・数年後にも価値として残るのか。

そこまで考える必要があります。

PREMIUM OFFICEでブルックリンスタイルを採用した理由

PREMIUM OFFICEシリーズでも、ブルックリンスタイルの要素を採用した事例があります。
それは、単に流行していたからではありません。
小規模オフィスにおいて、ただ白く整えただけの空間では、他の物件との差別化が難しい場面があります。

特に、デザイン感度の高い企業、クリエイティブ系の事業者、スタートアップ、小さくても印象のある拠点を求める利用者に対しては、空間そのものがメッセージになります。

レンガ調の壁や黒いフレーム、ラフな質感を取り入れることで、一般的な事務所とは違う印象をつくる。
小さな面積でも、記憶に残る空間にする。
働く人が、自分たちらしい場所だと感じられる余地をつくる。

そのために、ブルックリンスタイルは有効な選択でした。
つまり、デザインをただ尖らせたのではありません。
その物件、そのターゲット、その募集戦略にとって、必要な個性を与えたのです。

尖ったデザインは、目的があって初めて価値になる

尖ったデザインには力があります。

人の記憶に残り、話題になります。
好きな人には深く刺さり、物件の印象を一瞬で変えることもあります。

しかし、目的のない尖りは危険です。

ただ目立つだけでは、長く使われません。
奇抜なだけでは、運営しにくくなることもあります。
一部の人に刺さっても、本来届けたい相手に届かなければ意味がありません。

だから私たちは、尖っているかどうかだけでは判断しません。

その尖りが、建物の価値につながるのか。
オーナー様の目的に合っているのか。
利用者にとって魅力になるのか。
将来の運営や維持管理と両立するのか。

そこまで考えます。

「程よく創る」とは、尖らせないことではない

CUSTOM BUILDが考える「程よく創る」とは、無難にまとめることではありません。
尖ったデザインを避けることでもありません。

必要であれば、大胆なデザインも選ぶ、万人向けではないデザインも選ぶ、
そして、強い個性を持つ空間もつくります。

ただし、それは流行だからではありません。
見た目のインパクトだけを狙うため、だけでもありません。

その建物にとって、そのオーナー様にとって、その事業にとって、
最も価値が高まると判断したときに選びます。

かつて尖っていたブルックリンスタイルが一般化したように、デザインの評価は時代とともに変わります。
だからこそ、私たちはデザインの流行そのものではなく、その時代、その物件、その目的に対して何が有効なのかを見極めたいと考えています。

尖ったデザインとは、奇抜なデザインのことではありません。
必要な理由がある個性です。
そして、その個性をどう扱うかを判断することこそ、私たちが考える「程よさ」です。

執筆:プロパティー・パートナーズ株式会社
営業本部 クリエイティブディレクター
監修:建築技術部

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