変なプライドを持つ不動産営業に、大切な物件の元付を任せてはいけない

変なプライドとは?

不動産営業の世界には、独特のプライドがあります。大きな取引をまとめた、誰よりも早く未公開情報をつかんだ、有力なオーナーや投資家との関係を持っている、複雑な条件交渉をまとめた。そうした経験から生まれる自信は、不動産営業にとって必要なものです。

しかし、そのプライドを一般的な賃貸物件のリーシング営業にまで、そのまま持ち込んでしまうと、大きな間違いが起こります。写真を撮る。写真を補正する。募集資料を整える。ポータルサイトの掲載内容を見直す。物件の特徴を言葉にする。競合物件と比較する。

こうした仕事を「細かい作業」「営業社員がやる仕事ではない」と、ある意味、見下しているかのような担当者がいます。
言葉でそんなことをいう人はいないでしょうが、やっていることは、それと同じ態度、という人です。
昭和の時代の不動産業界なら、これが普通だったと思いますが、今の時代、そのような担当者に、大切な物件の元付を任せてはいけません。

不動産営業は、情報を持つ人が偉いという文化

不動産業界では、情報を持っている人が強いという価値観があります。特に売買や投資用不動産、未公開案件の世界では、誰よりも早く情報をつかみ、買主や借主へ持ち込むことが成果につながります。

条件のよい未公開物件であれば、資料が多少粗くても話は進みます。物件概要をまとめた簡単な紙と、数枚の写真だけで億単位の取引が決まることもあります。こうした世界で長く仕事をしていると、「営業力とは情報力と人脈である」「資料をきれいにすることは営業の本質ではない」という考えが強くなります。

その考え自体は、使われる場面によっては間違いではありません。問題は、その成功体験を、一般公開され、数多くの競合物件と比較される賃貸物件のリーシング営業にまで、無批判に持ち込んでしまうことです。

リーシング営業は、情報を流すだけの仕事ではない

一般的なオフィス、店舗、賃貸住宅の募集では、同じエリアに数多くの競合物件があります。
借主はポータルサイトや募集資料を見ながら、立地、賃料、面積、設備、外観、室内の印象を比較し、内覧する物件を絞り込みます。

写真が暗い、室内が大きく傾いて見える、資料が分かりにくい、物件の特徴が伝わらない。その時点で、内覧候補から外されることもあります。
リーシング営業の仕事は、物件情報をレインズやポータルサイトへ登録することだけではありません。
誰に貸したいのか。その相手に何を伝えるのか。競合物件と比べて何が強みなのか。弱点をどのような使い方や見せ方で補うのか。そこまで考え、募集活動へ落とし込むことがリーシング営業の仕事です。

ところが、間違ったプライドを持つ担当者は、こうした仕事を軽視します。
「写真の補正は自分の仕事ではない」「募集資料をつくるのは事務社員やデザイナーの仕事だ」「自分は営業だから、客を連れてくるのが仕事だ」。

そう考えてしまうこと自体が、リーシング営業としての大きな弱点です。

暗く傾いた写真を放置する理由は、技術不足か?時間不足か?

現在のスマートフォンや画像編集アプリを使えば、写真の明るさや傾き、水平、垂直、色味は短時間で整えられます。

もちろん、実際より室内を広く見せたり、存在しない設備を加えたり、古い内装を新しく見せたりする加工を行ってはいけません。不動産広告では、実物と異なる写真になれば誇大な表現につながります。

しかし、暗さを整える、広角レンズによって大きく傾いた柱や壁を補正する、肉眼で見た印象に近い色味へ戻すといった処理は、物件の魅力を誇張するための加工ではありません。
実際の物件を正しく伝えるための最低限の品質管理です。

それにもかかわらず、暗く傾いた写真を平気で何か月も掲載し続ける担当者がいます。これは、補正方法を知らないからとは限りません。

多くの場合、「そんなことまで自分がする必要はない」と考えているのです。
数分で改善できることを、営業としてのプライドが邪魔をして行わない。その結果、物件の第一印象が悪くなり、クリックされず、内覧候補にも入らない。

それでも反響がなければ、「時期が悪い」「賃料が高い」「このエリアは動いていない」と説明します。
自分たちの募集方法を見直さず、市場や物件に原因を求めるのです。

今の時代、「忙しい」は写真を放置する理由になるでしょうか?

不動産営業が忙しいことは事実です。電話対応、内覧、契約、条件交渉、社内調整、オーナーへの報告など、日々多くの仕事があります。
しかし、忙しいことと、募集品質を放置することは別の問題です。
今の時代、本気で募集品質を上げようと思えば、写真の修正は電車での移動時間中にもできます。
スマートフォン一台あれば、明るさの調整、傾きの補正、水平や垂直の修正、不要な余白のトリミングまで、その場で行えます。

高度な作品制作を求めているわけではありません。
実際に見た物件の印象を、画面上でもできるだけ正しく伝えるための最低限の処理です。

もちろん、すべての写真が一分や二分で完璧に整うわけではありません。しかし、暗く傾いた写真を何週間も放置してよい理由にはなりません。
本気で物件を決めようとする担当者であれば、移動時間や待ち時間を使ってでも改善します。自分で対応できなければ、社内の担当者へ依頼するか、外部へ指示を出します。

何もしないまま「忙しい」と言い続ける担当者は、時間が足りないのではなく、物件を決めるための優先順位を間違えている可能性があります。

ほんの少し前まで、生成AIは不動産写真には怖くて使えなかった

生成AIも、ほんの少し前までは不動産写真の修正に安心して使えるものではありませんでした。

写真を読み込ませて、「明るさだけを直してほしい」「建物や設備には触れないでほしい」「指定した箇所以外は変更しないでほしい」と伝えても、AIが勝手に別の場所を描き変えてしまうことがあったからです。

窓の形が変わる。柱が消える。照明が増える。床や壁の素材が変わる。存在しない設備が追加される。
不動産広告では、これは致命的です。写真として美しくなったとしても、実物と違えば誇大広告になりかねません。
そのため、つい1年くらい前までは生成AIを不動産写真の修正に使うことは、怖くてできない時期がありました。
しかし、その後の急速な進化で、現在は画像を維持しながら特定の箇所だけを整える精度が、以前よりかなり改善しています。

実物の構造や設備には触れず、暗さを整える、色かぶりを抑える、傾きを直す、水平や垂直を補正するといった修正を、言葉による指示でも行いやすくなっています。
もちろん、AIに任せればすべて安全ということではありません。修正後の写真は、必ず元写真と見比べ、実物と異なる部分がないかを人間が確認する必要があります。

それでも、専門的な画像編集ソフトを使えなければ何もできなかった時代と比べて、写真を整えるハードルが大きく下がったことは確かです。

PowerPointは苦手、Photoshopなんて使えない、が営業担当のプライド?

不動産営業の世界では、長い間、次のような言葉が通用してきました。

「自分は営業社員だから、PowerPointは得意ではない」「Photoshopのような専門ソフトは使えない」「写真の補正や資料づくりは事務サポート社員の仕事だ」「そんな作業をしている暇があるなら、外へ出て情報を集めるのが営業の仕事だ」。

売買や未公開情報を中心とする世界では、その考え方が成立した時代もありました。情報を早くつかみ、顧客へ持ち込むことが、そのまま営業成果につながっていたからです。

しかし、一般公開され、他の物件と画面上で比較されるリーシング営業では事情が違います。
写真、募集資料、掲載コメント、見せ方まで含めて営業活動です。
しかも現在は、Photoshopを習得しなくても、AIに言葉で指示することで、一定水準の写真修正ができます。

PowerPointを自在に使いこなせなくても、資料の構成案をつくり、文章を整理し、見出しを考え、たたき台をつくるところまでAIが支援します。

移動中の電車内でも、スマートフォン一台あれば作業できます。
そもそも、AIでなくとも、今のスマホのカメラは優秀です。
ネット使うようなサイズなら、スマホの広角モードで撮影し、スマホの修正機能で、パース補正も、色調補正も、トリミングも、ある程度のクオリティなら、全部が可能です。
高価で大きな一眼レフも、操作の習得が大変なPhotoshopも特別なケースを除けば、不要です。
それが、AIでさらに容易になります。

つまり、「スキルがない」「時間がない」「自分の仕事ではない」という三つの言い訳が、同時に通用しなくなっています。
要は、やる気と、業界特有の変なプライドを捨てる意識の問題なのです。

いま問われているのは、高度な制作技術ではありません。
預かった物件を決めるために、使える道具を使う意思があるかどうかです。

AIを使うかどうかではありません

ここで誤解してはいけないのは、不動産営業は全員AIを使うべきだ、という単純な話ではないことです。
重要なのは、AIを使ったかどうかではありません。物件を決めるために必要な改善を行ったかどうかです。

自分で写真を補正してもよい。
事務担当者に依頼してもよい。
カメラマンやデザイナーへ外注してもよい。
AIを使ってもよい。

方法は問いません。

ただし、営業担当者やリーシング責任者は、何をどう直すべきかを判断し、最終的な内容に責任を持つ必要があります。
「自分は営業だから制作作業はしない」という態度と、「自分は営業責任者だから、必要な制作を適切な人や道具に任せ、完成まで責任を持つ」という態度は、まったく違います。

前者は仕事の放棄ですが、後者はディレクションです。

豪華な募集資料をつくればよいわけでもありません

反対に、高額な費用をかけて募集資料をデザイナーへ外注すればよい、という話でもありません。
不動産実務を知らないデザイナーへ丸投げすると、見た目は美しくても、物件の本当の価値が伝わらない資料になることがあります。

店舗物件であれば、給排水の位置、電気容量、厨房設備、排気、搬入経路、看板の設置可能範囲などが重要です。
オフィスであれば、柱の位置、レイアウト効率、採光、空調、天井高、共用部、エレベーター、来客動線などが判断材料になります。こうした情報を理解せず、装飾やストックフォトを増やしても、リーシングにはつながりません。

実物の見栄えに自信がないからといって物件写真を小さくし、華やかなデザインで紙面を埋めれば、資料としては整って見えるかもしれません。
しかし、現地を見た借主が「資料で見た印象と違う」と感じれば、期待値を無駄に上げただけになります。
必要なのは、豪華なデザインではありません。
誰に貸したいのか。その借主は何を重視するのか。競合物件と比べて、どこに優位性があるのか。弱点をどのような使い方で補えるのか。

これを考える営業側のディレクションです。
デザインは、その戦略を伝わりやすくするための手段にすぎません。

リーシング営業が持つべき本当のプライドとは?

リーシング営業にもプライドは必要です。
しかし、そのプライドは、「自分は細かな作業をする人間ではない」という種類のものではありません。

自分が預かった物件を、どうすれば市場で選ばれる状態にできるかを最後まで考える。
写真が悪ければ撮り直す。暗ければ整える。資料が分かりにくければ直す。反響がなければ掲載方法を見直す。ターゲットがずれていれば、訴求内容を変える。
他人に任せる場合でも、何を伝えるべきかを自分で判断し、完成したものに責任を持つ。

それが、リーシング営業が持つべき本当のプライドです。
「これは自分の仕事ではない」と線を引くことではありません。

物件を決めるために必要なことであれば、自分で行うか、誰かに正しく指示し、必ず実行する。
その責任感こそが、プロとしてのプライドです。

元付を任せてはいけない担当者は、募集方法を検証しない

元付会社や営業担当者を選ぶときは、会社の知名度や担当者の話し方だけで判断してはいけません。
現在掲載されている募集写真を見てください。暗く傾いた写真が放置されていないでしょうか。

募集資料を見てください。
物件概要と間取り図を並べただけになっていないでしょうか。
反響が少ない理由を尋ねてください。
市場や賃料の話だけで終わっていないでしょうか。
改善案を聞いてください。

賃料を下げる、フリーレントを増やす、ADを積むという提案しか出てこないのであれば注意が必要です。
信頼できる担当者は、条件を変える前に、募集方法を検証します。
写真、資料、掲載媒体、募集コメント、ターゲット、仲介会社への周知、内覧時の見せ方まで、どこに改善余地があるかを考えます。
条件変更は、その検証を行ったうえで提案するものです。

募集方法を変えず、写真も資料もそのままにして、オーナーにだけ賃料や条件の譲歩を求めるのであれば、それはリーシング戦略とは言えません。

大切な物件を「預かるだけ」の担当者に任せてはいませんか?

元付会社は、オーナーの代わりに募集活動を担う存在です。

募集図面をつくり、レインズやポータルサイトへ掲載し、仲介会社へ情報を流せば仕事が終わるわけではありません。
それは募集を開始しただけです。
反響を確認し、競合を調べ、見せ方を改善し、仲介会社の反応を集め、必要に応じて戦略を変える。
この繰り返しがあって、初めてリーシング活動になります。

ところが、間違ったプライドを持つ担当者は、こうした改善を地味な作業と考えます。
物件を預かることには熱心でも、預かったあとの仕事が粗い。
オーナーへの報告では立派な言葉を並べても、実際の掲載写真や募集資料は何か月も変わっていない。

そのような担当者に、元付を任せ続けるべきではありません。

結論 変なプライドより、物件を決める責任を優先できる人に任せるべき

不動産営業のプライドが、すべて悪いわけではありません。
交渉力、情報力、行動力、経験への自信は、営業にとって大切です。

しかし、そのプライドが「細かな仕事は自分の仕事ではない」「写真や資料に時間を使うのは営業として格好悪い」「PowerPointや画像補正は事務社員に任せればよい」という方向へ向かった瞬間、リーシング営業としては危険です。

借主から見れば、担当者の社内での立場も、過去の実績も関係ありません。
目の前に表示された写真と募集条件、資料の内容を見て、内覧するかどうかを判断します。
そこで選ばれなければ、どれほど立派な経歴を持つ営業でも、物件を決めることはできません。

いまは、写真の補正も、文章の整理も、資料のたたき台づくりも、以前よりはるかに行いやすくなっています。
本気でやれば、電車での移動時間中にも改善できます。
それでも「できない」「時間がない」「自分の仕事ではない」と言い続けるのであれば、問題はスキルではありません。
物件を決める意思と責任の問題です。

オーナーが選ぶべきなのは、自分を大きく見せる営業ではありません。
物件をどうすれば選ばれるかを考え、地味な改善も惜しまず、結果が出るまで募集方法を見直せる営業です。

変なプライドを守ることより、預かった物件を決めることを優先する。
その姿勢を持たない担当者に、大切な物件の元付を任せてはいけません。

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