募集資料は最初にベストを尽くす

はじめに~最初から募集資料に手間をかけてますか?

不動産募集で、よく見られる失敗があります。
最初は、暗い写真、古い図面、最低限の物件概要だけで募集を始める。
しばらく反響がない。
内覧も少ない。

そこでようやく、写真を撮り直したり、募集資料を整えたりする。
それでも決まらないと、賃料を下げる。

この流れは、不動産業界では昔からよく見られるものです。
しかし、他の業界から見れば、かなり不思議なやり方でもあります。
商品を売るときに、最初から魅力が伝わらない写真や資料で売り出す業界は、そう多くありません。
不動産も同じです。
募集開始時点で、物件の見え方はすでに市場に出ています。

だからこそ、募集資料は「反響がなければ後から整えるもの」ではなく、最初にできるだけ良い状態で用意するべきものです。

目次

募集資料には、2つの役割がある

不動産業界で使われる募集資料には、大きく分けて2つの位置づけがあります。

ひとつは、宅建業法上の重要な情報を整理した「物件概要書」としての役割です。
所在地、面積、用途地域、構造、築年数、賃料、管理費、契約条件、取引態様など、物件を判断するために必要な情報を正確に伝える資料です。

もうひとつは、「営業広告」としての役割です。
物件の特徴を伝え、興味を持ってもらい、問い合わせや内覧につなげるための資料です。
いわゆる募集広告、営業パンフレット、販促資料、マイソクなどは、本来この2つの役割が合体したものだと考えるべきです。
正確な情報を載せるだけでは足りません。
かといって、魅力的に見せることだけを優先して、実態と違う印象を与えてもいけません。

もちろん、優良誤認をさせるような誇大広告違反はできません。
しかし、それでも「広告」はやはり「魅力を伝えてこそ」の広告です。
必要なのは、正確な情報と、物件の魅力が伝わる見せ方の両立です。

募集資料は、単なる物件情報の一覧ではありません。
検討者に「この物件を見てみよう」と思ってもらうための、最初の営業接点でもあります。

物件概要書をそのまま募集資料にしていないか

実務では、仲介業者間に情報を流すための物件概要書を、そのまま募集資料として流用しているケースがあります。
もちろん、物件概要書としてはそれで足りる場合もあります。
業者間で情報を共有するだけであれば、所在地、面積、賃料、条件、図面などが整理されていれば、最低限の役割は果たせます。しかし、それをそのまま借主や購入検討者に見せる資料として使うと、物件の魅力が伝わらないことがあります。

・写真が暗い。
・間取り図が分かりにくい。
・空間の使い方が想像できない。
・物件の特徴が整理されていない。
・ただ条件だけが並んでいる。

これでは、資料としては存在していても「営業広告」にはなっていません。
募集資料は、単なる情報伝達の紙ではありません。
検討者に「問い合わせてみよう」「一度見てみよう」と思ってもらうための入口です。

この入口が弱ければ、物件そのものを見てもらう前に、検討対象から外されてしまいます。

なぜ、募集資料づくりは後回しになるのか

では、なぜ不動産募集では、募集資料に手間とコストをかけることが後回しになりやすいのでしょうか。
大きな理由のひとつは、募集実務を一般仲介業者任せにしてしまうことです。
一般仲介業者は、成約して初めて仲介手数料を得る立場です。
もちろん、各社が営業努力をしていないという意味ではありません。

しかし、成約できるかどうか分からない物件に対して、写真撮影、図面作成、コピー作成、デザイン、販促資料の作り込みまで、自社の費用と労力で大きく先行投資することは、現実的には難しい面があります。
そのため、多くの場合、元付会社から提供された資料をもとに、自社名や連絡先、下部の帯部分などを差し替え、自社用のマイソクとして営業に使うことになります。

いわゆる「帯替え」です。
これは、一般仲介業者の手抜きというよりも、報酬構造から見れば自然な行動ともいえます。
成約できるか分からない立場の会社に、募集資料の品質向上まで全面的に期待することには限界があります。

だからこそ、本来その役割を担うべきなのは、元付会社です。
元付会社は、成約すれば貸主側から手数料を受け取る立場にあります。
また、貸主と直接話し、物件の条件、募集方針、ターゲット、賃料設定、広告戦略を組み立てる立場でもあります。

つまり、募集資料の品質は、一般仲介業者任せにするものではありません。
元付会社が責任を持って整えるべき領域です。

オーナーに必要性を説明することも、元付会社の責務

もちろん、募集資料に十分な手間やコストをかけられない理由が、元付会社だけにあるとは限りません。
ビルオーナー側が、募集資料や広告にコストをかけることを嫌がる場合もあります。

「そこまでしなくてもよい」
「とりあえず今ある資料で募集してほしい」
「決まらなければ、そのとき考えればよい」

そうした判断をするオーナーもいます。

その結果、元付会社が十分な募集活動を行えない条件で受託せざるを得ないのであれば、それはオーナー側の判断責任でもあります。

しかし、それをきちんと説明し、説得することも、元付会社の重要な役割です。
募集資料に手間とコストをかけることは、単なる見栄えの問題ではありません。
空室期間を短くし、適正な条件で成約するための投資です。
暗い写真や分かりにくい図面のまま募集を始めれば、本来得られたはずの反響を逃すかもしれません。
結果として空室期間が延びれば、失われる賃料収入の方が、資料づくりのコストより大きくなることもあります。

その意味を貸主に説明し、必要な準備を整えたうえで募集を始める。
そこまで含めて、元付会社のリーシング責任だと考えるべきです。
さらに言えば、元付会社には、どの案件をどの条件で受けるかを見極める姿勢も必要です。

貸主の意向を尊重することは大切です。
しかし、必要な提案にまったく耳を傾けてもらえず、資料づくりにも広告にも必要な準備ができないまま、結果だけを求められるような案件では、元付会社も十分な力を発揮できません。
そのような状態で無理に受託すれば、結局は貸主にとっても、元付会社にとっても、良い結果につながりにくくなります。
だからこそ、本当にリーシング力のある元付会社ほど、ただ案件を受けるのではなく、成果を出すために必要な条件を最初に確認します。
必要な準備ができるか。
募集方針を共有できるか。
市場の反応を見ながら、条件や見せ方を柔軟に見直せるか。

こうした前提が整わない場合には、あえて受託しないという判断も、元付会社の責任ある姿勢だと言えます。
何でも引き受けることが、良い元付会社なのではありません。
成果を出すために必要なことを説明し、必要な条件を整え、それができない場合には無理に受けない。
そこまで含めて、リーシングの実力なのです。

最初の印象で、検討対象から外される

不動産は、現地を見れば分かる商品です。
しかし、現地を見る前に、まず資料で判断されます。
物件の特徴も魅力も伝わらない、条件だけが並んでいる。
こうした募集資料では、物件そのものの価値以前に、検討対象から外されてしまうことがあります。

つまり、物件が悪いのではなく、伝え方が悪いためにチャンスを失っている場合があるのです。
特に、インターネット上で複数の物件が一瞬で比較される時代では、最初の見え方が重要です。
検討者は、ひとつひとつの物件を丁寧に読み込んでくれるとは限りません。

最初の数秒で「良さそうか」「違いそうか」を判断されます。
その段階で魅力が伝わらなければ、現地を見てもらう前に終わってしまいます。

最初にベストを尽くすと、判断が早くなる

最初から、できるだけ良い写真を用意する。

・物件の特徴が伝わる募集資料を作る。
・図面を見やすく整える。
・使い方のイメージが伝わるようにする。
・弱点も含めて、判断しやすい情報を整理する。

この状態で募集を始めれば、反響が弱かったときの判断が早くなります。

・資料の見せ方に問題があるのか。
・賃料設定が高いのか。
・募集条件が市場に合っていないのか。
・ターゲット設定がずれているのか。
・あるいは、物件そのものに改善すべき課題があるのか。

最初に資料面でベストを尽くしていれば、反響が弱かった場合でも、問題の原因を切り分けやすくなります。
逆に、募集資料が不十分なままでは、決まらない理由が分かりません。

・物件が悪いのか。
・賃料が高いのか。
・条件が合わないのか。

それとも、ただ魅力が伝わっていないだけなのか。
この判断が曖昧なまま時間が過ぎると、次の打ち手も遅れます。
不動産募集では、反響があるかどうかだけでなく、反響がない理由を早く見極めることが重要です。
そのためにも、募集開始時点でできる限り資料を整えておく必要があります。

最初にベストを尽くすことは、単に見栄えを良くするためではありません。
市場の反応を正しく読み、次の判断を早くするための準備なのです。

後から整えるのでは遅い~機会損失という視点

「決まらなかったら写真を撮り直そう」
「反響が弱ければ資料を作り直そう」

この考え方は、一見すると合理的に見えます。
しかし、その間にも時間は過ぎています。

空室期間が延びれば、賃料収入は失われます。
市場での印象も下がります。
さらに、周辺相場が動いていれば、後から条件を下げても、すでに後追いになっていることがあります。

最初に中途半端な資料で募集してしまうことは、単なる手抜きではありません。
機会損失につながる判断です。

不動産募集では、最初の出し方がその後の流れを大きく左右します。
最初に弱い資料で出してしまうと、反響が弱い原因が分かりにくくなります。

・物件が悪いのか。
・賃料が高いのか。
・ターゲットが合っていないのか。
・それとも、単に伝え方が悪いだけなのか。

この切り分けが遅れることが、さらに大きな損失になります。
最初からベストを尽くしていれば、問題の原因を切り分けやすくなります。
逆に、資料がいい加減なままだと、決まらない理由が分かりません。
物件が悪いのか、賃料が高いのか、ただ伝わっていないだけなのか。
その判断が遅れることが、さらに大きな損失になります。

賃料を下げる前に、伝え方を整える

賃料を下げることは、時には必要です。
しかし、その前にやるべきことがあります。

・物件の魅力は正しく伝わっているか。
・写真は十分か。
・募集資料は見やすいか。
・図面は分かりやすいか。
・他の物件と比較されたときに、選ばれる理由が見えるか。

ここを整えないまま賃料を下げても、本来の価値を市場に伝えきれないまま、ただ安くしているだけになる可能性があります。
もちろん、募集資料で物件を実態以上によく見せるべきではありません。
優良誤認につながるような表現や写真は避ける必要があります。
しかし、実際より悪く見える写真や、魅力がまったく伝わらない資料をそのまま使うことも、同じくらい問題です。
本来の価値が伝わらないまま市場に出してしまえば、検討される機会そのものを失ってしまいます。

募集資料は、リーシング戦略そのものである

不動産募集では、物件そのものの条件が重要です。
立地、面積、賃料、築年数、設備、管理状態。
これらは当然、検討者にとって大切な判断材料です。

しかし、それと同じくらい、最初の見せ方も重要です。
募集資料は、単なる物件概要書ではありません。
正確な情報を伝える資料であると同時に、物件を検討してもらうための営業広告でもあります。

そして、その品質を一般仲介業者任せにすることには限界があります。
一般仲介業者は、成約できるかどうか分からない立場で営業活動を行います。
その立場の会社に、物件ごとの本格的な資料づくりや広告戦略まで期待するのは、報酬構造上、無理があります。

だからこそ、元付会社が最初に整える必要があります。
・物件をどう見せるか。
・誰に届けるか。
・どの特徴を前面に出すか。
・どの弱点をどう説明するか。
・どのような判断材料を用意するか。

これらは、リーシング戦略そのものです。
募集資料を最初に整えることは、見栄えを良くするためだけではありません。
早く、正しく、市場の反応を見るためです。
そして、必要であれば早く条件を見直すためです。
募集資料を最初に整えることは、結果として空室期間を減らし、機会損失を抑えることにつながります。

決まらないから資料を整えるのではありません。
決めるために、最初から整える。
それが、本来の不動産募集に必要な考え方ではないでしょうか。

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