募集資料は最初にベストを尽くす

決まらないから募集資料を作り直すのでは遅い

不動産業界では、物件が決まらないと募集資料を見直すことが少なくありません。写真を撮り直し、デザインを変更し、それでも反響が弱ければ賃料を下げる。この流れは、ごく当たり前のように行われています。

しかし、本来は順番が逆です。

募集資料は、物件を市場へ出す前に最も完成度の高い状態にしておくべきものです。
募集資料は単なる広告ではありません。市場に対して物件の価値を最初に伝える営業活動そのものです。

募集開始時点で資料の完成度が低ければ、市場は物件そのものではなく、「伝わっていない物件」を評価することになります。その結果、反響が少ない理由が、賃料なのか、立地なのか、それとも募集資料なのか分からないまま時間だけが過ぎてしまいます。
空室期間は、そのまま機会損失になります。
だからこそ、「決まらないから募集資料を直す」のではなく、「最初からベストを尽くした募集資料で市場へ出す」という考え方が重要なのです。

目次

募集資料はリーシング戦略そのものである

募集資料というと、多くの人は写真やデザインを思い浮かべます。
しかし、それらは募集資料の一部でしかありません。
募集資料とは、誰に借りてもらいたいのか、その人は何を魅力と感じるのか、物件のどこを最初に見せるべきなのかを整理し、一つの営業資料として形にしたものです。

つまり、募集資料はリーシング戦略そのものです。

例えば店舗物件であれば、飲食店向けなのか、美容室向けなのか、クリニック向けなのかで、伝える内容はまったく変わります。
同じ店舗でも、水回りの位置が強みになることもあれば、弱点になることもあります。
間口の広さを見せるべき物件もあれば、天井高を強調したほうが反響につながる物件もあります。
人通りを最初に見せるべき立地もあれば、周辺環境より室内の自由度を見せたほうが効果的なケースもあります。

オフィスでも同じです。
眺望なのか。採光なのか。共用部なのか。エントランスなのか。
レイアウト変更のしやすさなのか。
同じ物件でも、狙うターゲットによって、魅力として伝えるべき内容は変わります。
駅から数十メートルしか離れていない二つの店舗でも、一方はすぐ決まり、一方は何年も空室ということは珍しくありません。

単純に賃料だけでは説明できない差が存在します。
だからリーシングでは、まず物件を分析し、「この物件は何を武器に戦うべきか」を決めます。

募集資料は、その戦略を市場へ伝えるための営業資料なのです。

ディレクションが募集資料を決める

リーシング戦略が決まると、次はディレクションです。
ディレクションとは、「どう見せるか」を決める作業です。

何を一番最初に見せるのか。
何を二番目に見せるのか。
写真は何枚必要なのか。
図面はどこへ配置するのか。
どの情報を大きく扱い、どの情報は控えめにするのか。
キャッチコピーは必要なのか。
文章は短くするのか、それとも詳しく説明するのか。

これらはすべてディレクションです。
ここで初めて募集資料の骨格が決まります。

つまり、写真を撮ることがスタートではありません。
デザインを考えることがスタートでもありません。

まず戦略があり、その戦略を募集資料へ落とし込むディレクションがあり、その結果として写真やデザインが決まるのです。
この順番を逆にすると、見た目はきれいでも、営業資料として弱い募集資料になります。

写真はディレクションを最大限に伝えるためにある

ここまで読むと、「写真はそれほど重要ではない」と思われるかもしれません。

しかし、それは違います。
写真は極めて重要です。
ただし、その役割は「きれいな写真を撮ること」ではありません。
ディレクションによって決めた内容を、最も伝わりやすく表現することです。

例えば、間口が武器なら、その間口が最も魅力的に見える位置から撮影する必要があります。
天井高が特徴なら、その高さが伝わる構図を選ばなければなりません。
採光が魅力なら、時間帯まで考えて撮影する必要があります。
撮影後も、明るさ、色調、コントラスト、水平、垂直、パースなどを適切に補正し、実際の印象を損なわない範囲で、本来の魅力が最も伝わる状態へ整えます。

つまり、写真は「物件を美しく見せるため」のものではありません。
リーシング戦略とディレクションによって決められた物件の価値を、正しく伝えるための手段なのです。

募集資料の責任者は営業担当者である

募集資料を制作すると聞くと、多くの人はデザイン会社へ依頼することを思い浮かべます。
しかし、募集資料の最も重要な部分は、デザイン会社の仕事ではありません。

誰へ貸したいのか。
その物件の本当の価値は何なのか。
競合物件と比べて、どこを武器にするのか。
どんな順番で情報を見せれば内覧につながるのか。

こうした判断は、営業担当者やリーシング責任者が行う仕事です。
つまり、募集資料づくりはデザインから始まるのではありません。
リーシング戦略から始まります。
その戦略を募集資料として設計するのがディレクションです。

ここまで決まって初めて、カメラマンは撮影でき、デザイナーはレイアウトでき、コピーライターは文章を書けます。
外部スタッフは「何を伝えるか」を決める人ではありません。
「どう伝えるか」を専門技術で形にする人です。

もちろん、経験豊富なデザイナーやカメラマンが改善提案を行うことはあります。
しかし、リーシング戦略そのものを任せることはできません。
募集資料の責任者は、デザイナーではありません。

営業担当者であり、リーシング責任者です。

写真はリーシング戦略を伝えるためにある

リーシング戦略と募集資料のディレクションが決まって、初めて撮影する写真の内容が決まります。写真は、先に撮っておいて後から資料へ当てはめるものではありません。誰に何を伝えるのかを決めたうえで、その意図が最も伝わる写真を撮る必要があります。

例えば店舗物件であれば、間口の広さを見せるのか、通行量や視認性を伝えるのか、天井高や設備を見せるのかによって、必要な写真は変わります。オフィスであれば、採光、眺望、エントランス、共用部、室内の使いやすさなど、想定するテナントによって優先順位が変わります。

写真の役割は、物件を単に美しく見せることではありません。営業担当者やリーシング責任者が見つけた物件の価値を、検討者が短時間で理解できるように可視化することです。そのためには、どこから撮るか、どの時間帯に撮るか、どの写真を最初に見せるかまで、募集資料全体の流れを考えて決めなければなりません。

もちろん、写真の品質を整えることも欠かせません。暗すぎる写真、色が濁った写真、水平や垂直が崩れた写真では、どれほど優れたディレクションがあっても意図は伝わりません。写真は、リーシング戦略を補助する脇役ではなく、その戦略を視覚的に伝える重要な表現手段です。

ただし、写真だけを先行させてはいけません。プロカメラマンに依頼し、きれいで格好いい写真が完成しても、それが誰に何を伝える写真なのかが明確でなければ、募集資料としての効果は限定的です。見栄えのよい写真を作ることと、物件の成約につながる写真を作ることは同じではありません。

写真の方向性を決めるのは、カメラマンではありません。営業担当者やリーシング責任者が、撮影するべきポイントと伝えるべき価値を決め、その方針をカメラマンへ伝えます。カメラマンは、その意図を構図、光、レンズ、撮影技術によって最大限に表現します。

営業が何を伝えるかを決め、カメラマンがどう見せるかを形にする。この役割分担が成立して初めて、写真は募集資料の中で本来の力を発揮します。

写真だけを良くすると、内覧時の失望を生む

募集資料の制作でよくあるのが、プロカメラマンに対して、「誇大広告にならない範囲で、できるだけきれいに、かっこよく撮ってください」と依頼するケースです。写真の品質を高めること自体は必要ですが、何を伝えるのかというディレクションがないまま、見栄えだけを追求すると問題が起こります。

写真では明るく、広く、洗練されて見えたのに、実際に内覧すると古さや狭さ、設備の状態が強く感じられる。すると検討者には、物件そのものの欠点以上に、「資料で見た印象と違う」という失望が残ります。

法的に誇大広告へ該当しない範囲であっても、営業として成功しているとはいえません。募集資料の目的は、問い合わせの件数だけを増やすことではないからです。内覧へつなげ、現地を見たうえで納得してもらい、契約へ進んでもらうことが目的です。

写真によって期待値を上げすぎれば、問い合わせは増えても、内覧後の成約率が下がることがあります。数字の入口だけを見れば反響は増えていても、実際には営業効率を悪化させている可能性があります。

特に見栄えのする新築や築浅のデザイナーズ物件であれば、建物そのものが持つ魅力を丁寧に撮影することで、写真と実物の印象を一致させやすくなります。素材、光、外観、共用部、室内の設計に写真映えする要素があるため、写真の完成度を高めることが、そのまま物件の価値を伝えることにつながります。

しかし、築年数が古く、実物が必ずしも見栄えしない物件では事情が異なります。写真だけを洗練させるほど、現地との落差が大きくなりやすいからです。

築古物件では、古さを隠すことがディレクションではありません。その古さを許容できる相手は誰なのか、その物件には古さを上回るどのような価値があるのかを見つけることが重要です。立地、賃料、間口、天井高、設備、使い方の自由度など、検討者が現地で確認できる価値を中心に見せる必要があります。

写真の役割は、実物以上に美しく見せることではありません。内覧したときに、「写真で見たとおりだった」「想像していたより悪くない」「この条件なら使える」と感じてもらうことです。

募集資料で設計すべきなのは、見栄えだけではなく期待値です。問い合わせを獲得するために期待を膨らませすぎず、かといって写真の品質不足によって実物より悪く見せることもない。その適切な位置を判断するのが、営業担当者やリーシング責任者の仕事です。

築古物件では「おしゃれなデザイン」が逆効果になることがある

募集資料の制作をプロのデザイナーへ依頼すると、紙面全体を美しく、おしゃれにデザインしてくれることがあります。それ自体は優れた技術です。しかし、その手法がすべての不動産に適しているわけではありません。

例えば、新築分譲マンションのパンフレットであれば、建物そのものが商品です。高級感のあるレイアウト、大きなビジュアル、ゆとりのある余白、洗練されたタイポグラフィは、ブランドイメージを高める効果があります。購入者は夢やライフスタイルを含めて商品を選ぶため、デザインそのものが販売価値になります。

しかし、築年数が古い賃貸オフィスや店舗物件では事情が異なります。

物件そのものの見栄えが弱いからといって、紙面全体を過度にデザインし、イメージ画像やCGを多用し、実際の物件写真を小さく配置すると、検討者が本当に見たい情報が埋もれてしまいます。

営業資料として最も重要なのは、デザインの美しさではありません。
物件を借りようとしている人が、短時間で必要な情報を理解し、「一度見てみよう」と判断できることです。
築古物件では、デザインは主役ではなく、物件を正しく伝えるための脇役であるべきです。
写真を必要以上に加工してはいけないのと同じように、紙面全体も実物以上の印象を演出しすぎてはいけません。資料がおしゃれであればあるほど、実際に内覧したときのギャップが大きくなり、期待していた印象との落差が失望につながることがあります。

優れた募集資料とは、デザインが目立つ資料ではありません。
物件そのものが自然に伝わり、検討者が迷わず判断できる資料です。

築古物件ほど、デザインで飾るのではなく、リーシング戦略に基づいて情報を整理し、本当に伝えるべき価値を前面に出すことが重要になります。

写真品質は最低限の条件であり、演出とは違う

ここまで読むと、「築古物件では写真を飾りすぎてはいけないのだから、多少暗くても、傾いていても構わない」と考える人がいるかもしれません。しかし、それは大きな誤解です。

物件を実物以上に美しく見せないことと、写真の品質を下げることはまったく別の話です。

不動産写真では、水平、垂直、パースの歪みを整えることは最低限の品質管理です。建物や室内の柱が傾き、壁が倒れて見える写真は、実物を正確に伝えているとは言えません。暗すぎる写真や色味が不自然な写真も同様です。それらは演出ではなく、単に撮影や補正が不十分な状態です。

広角レンズで撮影すれば、室内の壁や柱は歪みやすくなります。だからこそ、撮影後にパース補正を行い、実際に人が見た印象に近づけます。これは物件を良く見せるためではなく、正しく見せるための補正です。

一方で、建物を斜めからダイナミックに見せたり、低い位置から見上げるように撮影したりする写真があります。これはプロカメラマンが意図的に行う表現方法です。物件の印象や迫力を伝えるための演出であり、基本となる募集写真とは役割が異なります。

こうした写真が成り立つのは、物件全体を正確に確認できる写真が揃っていることが前提です。水平・垂直・パースを整えた写真で検討者が物件を正しく理解できるからこそ、印象的なカットが効果を発揮します。

撮影技術が未熟なために傾いてしまった写真と、意図して構図を作った写真はまったく違います。前者は品質不足であり、後者は表現技術です。

募集資料では、まず正確な写真を用意することが最優先です。そのうえで必要に応じて印象的な写真を加えることは効果的ですが、演出だけで資料を構成してはいけません。

築古物件ほど、実物を正確に伝えることが信頼につながります。写真品質の基本を守りながら、リーシング戦略に沿って価値を伝えることが、募集資料に求められる本当の役割なのです。

私が募集資料の重要性を痛感した新築デザイナーズ物件

私自身、募集資料によって物件の評価が大きく変わることを経験しました。

ある新築デザイナーズマンションを建築したときのことです。駅からも近く、設計にもこだわり、設備や仕様も当時としては十分に競争力がありました。賃料も周辺相場から大きく外れていたわけではありません。

募集は大手不動産会社へ専任で依頼しました。
ところが、思うように入居が決まりません。

募集状況を確認すると、レインズや自社サイトへ掲載されていた写真は、現地で営業担当者が撮影しただけのものでした。写真は暗く、水平も十分に取れておらず、広角レンズによる歪みも目立ちました。新築デザイナーズマンションが持つ空間の魅力や設計意図は、ほとんど伝わっていませんでした。

そこで私は、まず物件をどのように見せるべきかを考え直しました。
レンタル家具を使ってステージングを行い、この部屋でどのような暮らしができるのかをイメージできる空間をつくりました。そのうえでプロカメラマンへ撮影を依頼し、募集資料も全面的に見直しました。

ここで行ったのは、単に写真をきれいにしたことではありません。

どのような人へ貸したいのか、その人へ何を伝えるべきなのかを整理し、その考え方に合わせてステージングを行い、写真を撮影し、募集資料全体を組み立て直したのです。

結果として、住戸は短期間で成約しました。

もちろん、すべてが募集資料だけの効果だったとは言えません。
しかし、少なくとも建物そのものは変わっていません。変わったのは、物件の価値を市場へ伝える方法でした。

この経験から私が学んだのは、募集資料は完成した建物を紹介するための紙ではないということです。
募集資料は、物件の価値を市場へ翻訳する営業資料です。
物件の魅力が伝わらなければ、市場はその魅力を評価できません。そして、一度「反響の少ない物件」という印象がつくと、空室期間が長くなり、本来必要のなかった賃料改定や条件変更を検討することにもなります。

だからこそ、募集資料は「決まらないから作り直す」ものではなく、「募集開始時点でベストを尽くす」べきものだと考えています。

募集資料は市場の反応を正しく測るためにある

募集資料を最初から整える理由は、見栄えを良くするためだけではありません。市場の反応を正しく測るためでもあります。

物件のターゲットを定め、何を価値として伝えるかを決め、写真、図面、文章、デザインを整えたうえで募集を始める。そこまで準備しても反響が弱いのであれば、初めて賃料、契約条件、用途、設備、ターゲット設定などを見直すことができます。

しかし、募集資料の完成度が低いままでは、反響がない理由を判断できません。賃料が高いのか、立地に問題があるのか、競合物件に負けているのか、それとも単に物件の価値が伝わっていないだけなのかが分からないからです。

この状態で賃料だけを下げると、本来は資料を改善すれば決まった可能性のある物件まで、安く貸すことになります。空室期間を短くするための判断が、結果として物件の収益性を下げることにもなりかねません。

募集資料は、市場へ物件を提示する最初のプレゼンテーションです。そのプレゼンテーションが不十分なまま市場の反応を見ても、正しい検証にはなりません。

最初にベストを尽くした募集資料を用意することで、初めて市場の評価を判断できます。反響数だけでなく、問い合わせの内容、内覧者の属性、どの写真に関心が集まったか、現地で何を評価され、何を懸念されたかまで確認することで、次の改善につなげることができます。

募集資料は、一度作って終わるものでもありません。市場の反応を見ながら、写真の順番、説明文、訴求点、対象業種などを見直し、リーシング戦略そのものを調整していくための基準になります。

ただし、その改善は、最初から不十分な資料を出して様子を見ることとは違います。最初にできる限りの準備をしたうえで、それでも見えなかった市場の反応を受けて修正するからこそ意味があります。

募集資料の完成度を高めることは、単なる制作コストではありません。賃料を下げる前に行うべき検証であり、空室期間と収益性を守るための営業投資なのです。

募集資料は営業が責任を持って「つくる」べき――すべて自分でやれという意味ではありません

ここでいう「つくる」というのは、営業担当者やリーシング責任者が、紙面やWebサイトのデザイン、写真撮影、画像補正まで、すべて自分で作業しなければならないという意味ではありません。

募集資料は、リーシング戦略そのものです。誰に貸したいのか、何を価値として伝えるのか、競合物件と比べてどこを武器にするのかを考え、その内容と構成を判断し、決めることこそが、ここでいう「つくる」という言葉の本質です。

資料の見栄えを整えること、紙面やWebサイトをデザインすること、写真を撮影・補正することは、その戦略を形にするための仕上げの工程です。営業責任者に不足している技術や時間まで含めて、すべて本人が担うべきだという意味では決してありません。募集資料は、写真を並べ、物件概要を載せ、紙面を整えれば完成するものではありません。まず営業担当者やリーシング責任者が、誰に貸したいのか、何を価値として伝えるのか、競合物件と比べてどこを武器にするのかを決める必要があります。

その判断を募集資料へ落とし込むのがディレクションです。
写真、図面、文章、デザインは、そのディレクションを形にするための手段です。プロカメラマンは、営業が見つけた物件の価値を写真として最大限に伝えます。デザイナーは、検討者が必要な情報を短時間で理解できるように紙面を整理します。しかし、何を伝えるべきかという営業判断まで外注することはできません。

こうした作業を有料のプロへ外注するのか、それとも自社内で制作するのかを、費用対効果から判断することも、営業担当者やリーシング責任者の仕事です。

本来であれば、最低限の見栄えを整える技術を持った社員が社内にいることが理想です。
しかし、資料作成、写真撮影、画像補正を一定水準で行える人材がいないというのが、多くの中小不動産会社の実情でもあります。しかし、私は、すべての物件について、プロカメラマンやプロデザイナーの技術が必要だとは考えていません。

分譲マンションのように、多数の住戸を販売し、広告費を十分にかけられるケースは別です。一般的な賃貸オフィスや店舗物件では、営業担当者や営業を補助する社員が、社内で募集資料を作ることが普通です。
これは不動産広告の特殊なところです。一つの物件や一つの区画が決まれば、その募集資料の役割は終わります。毎回プロへ依頼していては、広告費を回収できない物件も少なくありません。

だから、プロと同じ水準のデザイン技術や撮影技術が、すべての担当者に必要だというわけではありません。しかし、社内で作るからといって、最低限の品質まで省略してよいわけでもありません。

写真は重要です。ただし、実物以上に美しく見せるためではなく、物件の価値を正確に伝えるために整える必要があります。築古物件だからといって、暗い写真や歪んだ写真が許されるわけではありません。水平、垂直、パースを整えることは、不動産写真として最低限必要な品質です。

一方で、写真や紙面を過度に美しく仕上げ、内覧時に実物との落差を生むことも避けなければなりません。問い合わせを増やすことだけを目的にするのではなく、内覧後の納得と成約まで見据えて期待値を設計する必要があります。
新築や築浅のデザイナーズ物件は、建物そのものの魅力を写真で伝えやすい物件です。
しかし、築年数が古く、見栄えしにくい物件ほど、何を価値として見せるかというリーシング戦略とディレクションが重要になります。

募集資料は、物件を飾るためのものではありません。
物件の本当の価値を市場へ正しく伝え、その反応を確かめ、次の営業判断へつなげるための資料です。

だからこそ、決まらないから写真を撮り直し、決まらないからデザインを変えるのでは遅いのです。
募集開始時点でリーシング戦略を立て、営業担当者やリーシング責任者が責任を持ってディレクションし、その意図を写真、図面、文章、デザインによって形にする必要があります。

社内の広報チームや資料作成の担当者、外部のカメラマンやデザイナーの力を借りること自体は必要です。しかし、彼らに任せるのは、営業が決めた方針を専門技術によって分かりやすく、美しく、正確に表現する部分です。
リーシング戦略を考え、募集資料の内容と構成を決め、何をどの順番で見せるかをディレクションする。この重要な制作過程の八割以上は、営業担当者やリーシング責任者が担うべきものです。

外部の専門家へ募集概要だけを渡し、「あとは格好よく作ってください」と丸投げするものではありません。社内の広報担当者や資料作成担当者へ、物件概要だけを渡して任せればよいというものでもありません。

何を伝えるのか、誰に伝えるのか、何を最初に見せ、何を判断材料として示すのか。その募集資料の中身と構成を決めるところまでは、営業担当者やリーシング責任者の仕事です。そのうえで、写真を整える技術、紙面を見やすく設計する技術、Webサイトとして実装する技術など、自分たちに不足する専門的なスキルを借りればよいのです。

募集資料に最初からベストを尽くすということは、営業担当者が何もかも自分の手で作ることではありません。
また、費用をかけて、すべてをプロへ外注することでもありません。
物件の価値を最も理解している営業担当者やリーシング責任者が、リーシング戦略を考え、募集資料の内容と構成を決め、必要な専門技術を適切に使いながら完成させることです。

それが、募集資料を営業が責任を持って「つくる」という意味なのです。

最後に~元付会社に読みかえても同じ

ここでは「営業担当者」とか「営業責任者」という社内としての言葉を使いましたが、リーシング仲介業務においては、このまま「元付会社」と読みかえて頂いても、そのまま同じことが言えます。

執筆:プロパティー・パートナーズ株式会社
営業本部 クリエイティブディレクター

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