写真を外注できても物件を見る目は外注できない

はじめに~不動産の写真撮影サービスが増えてきたけれど…

最近は、不動産物件の写真撮影を低料金で全国的に依頼できるサービスが増えています。
全国のカメラマンとサイト運営会社が提携し、物件専用の写真を早く安く撮影してくれるネット時代のサービスです。
また、間取り図を安く作成してくれるサービスも増えました。

これはとても良いことです。
昔の不動産募集では、暗い写真、傾いた写真、何を見せたいのか分からない写真が平気で使われていました。
そうした劣悪な写真で物件を募集する慣習が改善されること自体は歓迎すべきことだと思います。

しかし私は、元付業者の立場で考えると少し違う見方をしています。
綺麗な写真を撮ることと、物件の価値を理解することは別だからです。

目次

綺麗な写真だけで決まるわけではない

マンションのように相場が明確で、比較対象も多い物件であれば、綺麗な写真や整った間取り図の効果は大きいでしょう。
しかし、それ以外の物件はどうでしょうか。

・築年数のあるビル。
・個性的な店舗。
・癖のあるオフィス。
・用途変更の可能性を持つ建物。
・周辺環境まで含めて価値が決まる物件。

こうした物件は、単に綺麗に撮影すれば魅力が伝わるとは限りません。
むしろ、どこに価値があるのかを理解していなければ、本当の魅力は伝わりません。

自分で歩かなければ見えないものがある

元付業者であれば、本来は自分で現地へ行くべきです。
これは当たり前のことです。

・自分で写真を撮る。
・駅から歩く。
・周辺環境を見る。
・近くの店を見る。
・建物の入口に立つ。
・貸室の中を歩く。
・窓から外を見る。

そうすることで初めて見えてくるものがあります。
・この建物は何が強みなのか。
・どこが弱点なのか。
・どこを見せるべきなのか。
・どこは先に説明すべきなのか。
・どのようなテナントに向いているのか。

こうしたことは、パソコンの前で図面を眺めているだけでは分かりません。
ましてや、撮影を丸投げしただけでは分かりません。

撮影はリサーチでもある

私は写真撮影を単なる作業だとは思っていません。
元付業者にとって、撮影はリサーチでもあります。

・この部屋はどの角度から見ると広く感じるのか。
・この窓からの景色は魅力なのか。
・この柱は欠点なのか、それともレイアウト次第で価値になるのか。
・共用部のどこを見せるべきか。
・エントランスはどう見えているか。

現地でカメラを構えながら考えることで、募集の方向性が見えてくることがあります。
つまり撮影とは、広告制作であると同時に、物件理解のプロセスでもあるのです。

間取り図も現地と見比べて初めて意味がある

間取り図も同じです。
外注で綺麗な図面を作ることは悪いことではありません。
しかし、元付業者自身が現地を見ずに図面だけを整えているのであれば、それは少し違うと思います。

・実際の柱の位置。
・窓の高さ。
・梁の圧迫感。
・扉の開き方。
・家具やデスクを置いたときの使い勝手。

図面だけでは分からないことが現地にはたくさんあります。
現地と図面を見比べることで、
「ここは工夫すれば弱点ではなくなる」
「ここは先に説明しておいた方がよい」
「この部分は募集資料で補足しよう」

という気づきが生まれます。
その気づきこそが、元付業者の価値であり、責務だと思うのです。

営業担当は、カメラマン任せではなくディレクターであるべき

個別性の強い物件では、不動産のプロではないカメラマンに丸投げしても、本当の見せどころは伝わりません。
だからこそ、営業担当者は映画でいえば監督、ディレクターの立場であるべきです。

・カメラマンに同行する。
・あるいは事前に自分でスマホで撮影しておく。

「この角度から撮ると奥行きが伝わる」
「この景色は必ず押さえてほしい」
「この柱は弱点ではなく工夫の余地として見せたい」
「駅からの道の雰囲気も伝えたい」

そうした指示を出す必要があります。
言い換えれば、自分で絵コンテを書くということです。
ただ写真を撮るのではなく、

・どんな順番で見せるのか。
・何を強調するのか。
・どこを補足するのか。
・どこを先に説明するのか。

その設計図を描くのは元付業者の仕事です。
少し大げさに言えば、営業担当者は映画の黒澤監督であるべきなのです。

外注してよいものと、外注してはいけないもの

写真撮影は外注してもいい。
間取り図作成も外注していい。
画像補正も外注していい。

しかし、物件を見る目まで外注してはいけません。
・物件の強みを見つけること。
・弱点を理解すること。
・誰に向いている物件なのかを考えること。
・どのように伝えるべきかを判断すること。

これは元付業者の仕事です。
外注すべきなのは作業であって、判断ではありません。
綺麗な写真は必要です。
見やすい間取り図も必要です。
しかし、それだけでは足りません。

元付業者が自分の足で歩き、自分の目で見て、自分の頭で考える。
その積み重ねがあって初めて、募集資料は単なる物件概要ではなく、その物件の価値を正しく伝える「広告資料」になるのだと思います。

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