オフィスリーシングは「客付任せ」では決まらない

目次

空室対策で元付会社が本当に考えるべきこと

(1)「オフィス」の空室対策がうまくいかないという方へ

ビル管理会社に管理を委託するメリットとしてよく挙げられるのは、日常管理の煩雑さから解放されることです。

清掃、設備管理、修繕対応、入居者対応、契約管理など、オーナーが自ら行うには負担の大きい業務を任せられることは、確かに大きなメリットです。

しかし、その「ビル管理」の中に含まれるリーシング、つまり空室対策は、日常管理の延長だけで本当に十分なのでしょうか。
特にオフィスリーシングについては、ここ数年で前提が大きく変わりました。
働き方改革、リモートワーク、アフターコロナのオフィス再編によって、企業がオフィスに求めるものは変化しています。

従来のように、募集図面を作り、仲介会社に情報を流し、ポータルサイトに掲載すれば自然に反応がある、という時代ではなくなりつつあります。

もちろん、それで決まる物件もあります。

しかし、競合物件が多いエリアや、従来型のオフィス需要から外れ始めている物件では、それだけでは十分とは言えない場合があります。

(2)リーシングは、本来マーケティング営業である

リーシングとは、本来マーケティング営業です。

誰に向けた物件なのか。
どのような使い方に向いているのか。
何を魅力として伝えるべきなのか。
競合物件と比べて、どこで選ばれる可能性があるのか。

こうしたことを整理したうえで、募集資料、写真、コピー、レイアウト図、内覧時の見せ方まで考える必要があります。

場合によっては、内装、家具、区画の使い方、用途の可能性まで見直す必要があります。

他業界では、売れにくい商品があれば、誰に向けて、どう見せ、どのように市場へ届けるかを考えます。

・ホテルであれば、写真、予約サイト、口コミ、広告導線を整えます。
・飲食店であれば、メニュー、写真、SNS、検索広告、店頭での見せ方を工夫します。
・ECであれば、商品ページ、広告文、レビュー、LP、ターゲット設定を改善します。

ところが不動産、とくにオフィスリーシングでは、まだ「仲介会社に情報を流せば市場に出したことになる」という発想に寄りがちです。
しかし、マーケットからの反応が弱い物件ほど、本当に必要なのは、募集活動を増やすことだけではありません。
物件を一つの商品として捉え直し、誰に、何を、どのように伝えるかを設計することです。

(3)広告費(AD)の前に、考えるべきことがある

オフィスリーシングでは、広告料やリーシング促進費、いわゆる「AD」について議論されることがあります。

ここで誤解のないように整理しておく必要があります。

宅建業法上、通常の仲介業務に含まれる広告宣伝費用を、仲介報酬とは別に当然のように受領することは認められていません。
報酬とは別に受領できる広告料は、依頼者の特別な依頼に基づく広告など、通常の募集活動を超える費用に限られるとされています。

ただし、何が通常の募集活動で、何が通常の募集活動を超える広告活動なのかは、個別事情によって判断されるべきものです。

一般的には、募集図面の作成、レインズ登録、自社サイト掲載、ポータルサイト掲載、仲介会社への紹介活動などは、通常の募集活動に含まれるものと考えられやすいでしょう。

一方で、依頼者から特別に依頼され、通常の募集活動を超えて実施する広告、たとえばWEB広告、動画制作、特設サイト制作、有料媒体への掲載、特別な撮影やプロモーションなどは、別途費用として整理される余地があります。

しかし、ここで本当に考えるべきことは、単に費用が通常の範囲を超えているかどうかだけではありません。

仮に適法な形で広告費を上積みしたとしても、その広告がリーシング戦略としてピントの合ったものでなければ、空室対策としては機能しにくいからです。

広告費をかければ決まるわけではありません。

ターゲットが曖昧なまま広告を出しても、物件の魅力が整理されていなければ効果は出にくい。
見せ方がずれていれば、広告費をかけても市場には刺さらない。
そもそも今の貸し方が市場に合っていなければ、広告だけでは解決できない。

つまり、適法な広告費を使うことと、効果的なリーシング施策になることは別の問題です。
広告費は、戦略の代わりにはなりません。

(4)他業界なら、売れない商品は広告と商品設計を見直す

他業界では、売れにくい商品があった時、単に販売代理店のやる気だけに頼ることはありません。

・誰に、どう知らせるか。
・どう見せれば選ばれるのか。
・商品そのものを変える必要はないのか。
・価格、見せ方、売り場、広告導線をどう設計するか。

こうしたことを考えます。

ホテルなら広告を出します。
飲食店なら写真、メニュー、SNS、検索広告、口コミ導線を整えます。
ECなら商品ページ、広告文、写真、レビュー、LPを改善します。

ところがオフィスリーシングでは、数千万円、数億円単位の資産でありながら、借り手へ直接届けるための広告・マーケティング予算がほとんど取られていないことがあります。

募集図面を作り、仲介会社に流し、反応がなければADを積む。
しかし、そのADが借り手への広告になっていなければ、問題は解決しません。
市場に届いていない物件は、選ばれる以前に、知られていない可能性があるからです。

(5)本当に価値があるのは、媒体ではなくディレクションである

法律上の整理では、どうしても「通常業務か」「特別な広告か」「外部媒体に費用が発生しているか」という形で考えられます。
もちろん、報酬規制を守るためには重要な整理です。
しかし、リーシング実務の現場から見ると、本当に価値があるのは、広告媒体そのものではありません。

その前段にあるディレクションと戦略です。

・この物件は誰に向けるべきなのか。
・どの弱点をどう補うべきなのか。
・どの魅力を前面に出すべきなのか。
・写真、コピー、図面、内覧導線をどう組み立てるべきなのか。

広告を出すなら、誰に何を届けるために出すのか。

ここを考えずに、単に広告費をかけても、空室対策として機能するとは限りません。
逆に、大きな広告費をかけなくても、見せ方や貸し方を見直すことで反応が変わることもあります。

重要なのは、広告費の多寡ではありません。
その物件をどう市場に届けるかという設計です。

(6)決まらない時に考えるべきこと

空室が決まらない本当の原因を、完全に特定することはできません。
同じように手を尽くしても、すぐ決まる区画もあれば、なかなか決まらない区画もあります。

だからこそ、決まらない時に重要なのは、同じ募集を続けることではありません。
まず、その物件が十分に市場へ届いているのかを確認することです。

・知られていないのか。
・知られているが選ばれていないのか。
・そもそも今の用途や見せ方が市場に合っていないのか。

この切り分けをせずに、賃料だけを下げたり、広告費だけを増やしたりしても、本当の改善にはつながりません。
必要なのは、物件を一つの商品として捉え直し、広告、マーケティング、見せ方、貸し方を組み立て直すことです。

・場合によっては、写真を撮り直す。
・募集資料を作り直す。
・ターゲットを変える。
・家具を入れて見せ方を変える。
・セットアップオフィス化を検討する。
・区画の使い方を変える。
・オフィス以外の用途可能性を検討する。

大切なのは、「必ず決まる方法」を知っていることではありません。
決まらない時に、次の仮説を立て、次の手を考えられることです。

高い稼働率を維持していても、なぜ決められない物件があるのか?

(7)私たちの考えるオフィスリーシング

私たちは、広告費を使うこと自体を否定しているわけではありません。
必要であれば、むしろ積極的に、適法な形で、通常の募集活動を超える広告やプロモーションを検討することも重要です。

しかし、それは考えることを放棄するための費用ではありません。
元付会社がまず考えるべきなのは、その物件の魅力、弱点、ターゲット、伝え方、貸し方です。

そのうえで必要な手段として、広告、募集資料、写真、WEBページ、内覧導線、改修、用途変更の可能性を検討する。
それが、本来のオフィスリーシングだと考えています。

私たちは、ビル管理、リーシング、設計・施工、バリューアップの実務を横断して見ながら、空室の原因を整理し、その物件に合った「程よい貸し方」と「伝え方」を検討します。

オフィスリーシングは、客付会社任せで完結するものではありません。
元付会社が、物件ごとの戦略とディレクションを持てるかどうか。

そもそも、ここにこそ、オフィス空室対策の本質があると考えています。

(7)オフィス空室対策を見直すために

空室が長期化している区画や、従来の募集方法では反応が弱い物件では、まず現状を整理することが重要です。

・その物件は誰に向けた商品なのか。
・募集資料や写真で魅力は伝わっているのか。
・借り手候補に十分認知されているのか。
・広告費を使う前に、見直すべき点はないか。
・広告費が本当に有効なものになっているのか?
・そもそも今の貸し方が市場に合っているのか。

私たちは、こうした視点からオフィス空室の状況を整理し、物件ごとに必要な改善の方向性を検討しています。
詳しい診断項目や、募集状況を見直すための考え方をまとめた資料をご用意しています。

空室が長期化しているオフィス区画や、従来の募集方法では反応が弱い物件については、まずは資料をご覧ください。

 

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