AI時代の不動産バリューアップとは何か?都内一等地の商業施設の成功失敗で考える

始めに~AI時代に問われるのは、見えている現象の奥にある構造を読む力である

都内一等地の大型商業施設を見ていると、ふと感じることがあります。

人が少ない。
空き区画がある。
以前より活気が弱い。
一流の立地なのに、少し寂しく見える。

こうした印象だけを見ると、「この商業施設はうまくいっていないのではないか」と感じることがあります。

しかし、商業施設の成否は、外から見ただけでは簡単に判断できません。
なぜなら、一般の来館者に見えているものと、ビルオーナーや運営者が見ているものは違うからです。

目次

都内一等地の商業施設から考える、不動産キュレーションの重要性

AI時代の不動産バリューアップとは何か。
このテーマを考えるうえで、都内一等地にある商業施設は、とても分かりやすい事例になります。

・商業施設は、立地がよければ成功するわけではありません。
・建物が立派なら成功するわけでもありません。
・一流のテナントを集めれば、それだけで成功するわけでもありません。
・外から見ると、人が少ない施設は失敗に見えるかもしれません。
・空き区画があれば、苦戦しているようにも見えます。

しかし実際には、商業施設の成否は、外から見ただけでは判断できません。

超高級ブランドは、人の多さだけで勝負しているわけではありません。
ビルオーナーにとっては、見た目の賑わいよりも、想定賃料、稼働率、投資回収が重要です。
撤退区画があっても、賃料を大きく下げずに早期に次のテナントへ入れ替えられるなら、必ずしも失敗とは言えません。

つまり、見えている現象の奥には、収支、リーシング、テナント構成、ブランド戦略、景気変動、そして施設全体の文脈があります。

AIは、こうした視点の漏れを防ぐうえで非常に有効です。
人流だけでなく、賃料、稼働率、テナントの採算、景気変動、投資回収など、評価すべき項目を整理してくれます。

しかし、AIだけでは十分ではありません。

・その場所に何を入れるべきか。
・何を入れないべきか。
・一見すると常識外れでも、その場所には合っている選択は何か。
・尖っているのに、センスがいい判断はどこにあるのか。

そこには、人間の感性によるキュレーションが必要です。
AI時代のバリューアップとは、AIで普通の選択肢を網羅し、人間の感性でそこから新しい文脈を見出すことです。

今回は、都内一等地の商業施設を題材に、外からは見えにくい不動産価値と、AI時代に必要なキュレーションについて考えてみます。

人が少ないことは、必ずしも失敗ではない

商業施設を見るとき、多くの人はまず人の多さを見ます。

混雑している。
行列がある。
館内に活気がある。

そう見えれば、成功しているように感じます。
逆に、人が少なく、静かで、空き区画があると、失敗しているように見える。

しかし、これは一面的な見方です。
特に都内一等地の高級商業施設では、必ずしも人の多さだけで勝負しているわけではありません。
超高級ブランドは、大量の来館者で売上をつくる業態ではありません。

重要なのは、人数ではなく、購買力のある顧客が来ているか。
ブランドの世界観を保てているか。
静かで上質な体験を提供できているか。

むしろ、人が多すぎることでブランド体験が壊れる場合もあります。
したがって、館内が静かであること自体を、すぐに失敗と見ることはできません。

問題は、その静けさが「高級感」として機能しているのか。
それとも「目的地性の弱さ」として見えてしまっているのか。

そこを分けて考える必要があります。

ビルオーナーにとっての成功は、見た目の賑わいだけではない

一般の来館者から見ると、商業施設の成功は賑わいで判断されがちです。
しかし、ビルオーナーにとって重要なのは、必ずしも館内の混雑度ではありません。

・想定した賃料収入が得られているか。
・稼働率が維持されているか。
・投資回収が成立しているか。
・建物全体の資産価値が保たれているか。

これらが重要です。
来館者にはガラガラに見えても、ビルオーナーとして必要な収支が確保できていれば、それは必ずしも失敗とは言えません。
逆に、見た目には賑わっていても、賃料が下がっていたり、テナントの採算が合っていなかったり、運営コストが重かったりすれば、事業としては苦しい場合もあります。

つまり、商業施設の成功は、誰の立場から見るかによって変わります。

・来館者にとっての成功。
・テナントにとっての成功。
・ビルオーナーにとっての成功。
・運営者にとっての成功。

それぞれ評価軸が違うのです。

撤退区画があるだけでは、失敗とは言えない

商業施設では、テナントの撤退が起こります。
外から見ると、撤退区画があるだけで「苦戦している」と見えます。

もちろん、長期間空き区画が残れば、施設全体の印象は悪くなります。
しかし実務上は、撤退そのものよりも、その後のリーシングが重要です。
賃料を大きく下げず、短期間で次のテナントに入れ替えられるのであれば、それは必ずしも失敗ではありません。
むしろ、テナントの新陳代謝として機能している場合もあります。

逆に問題なのは、撤退後に長期間空き区画が残ることです。
さらに、次のテナントを入れるために賃料を大きく下げざるを得ない場合は、施設の収益力やブランド力が弱まっている可能性があります。

つまり、商業施設の評価では、

・撤退があるかどうかではなく、
・撤退後にどの条件で、
・どの速度で、
・どのようなテナントに入れ替えられるか。

そこを見る必要があります。
しかし、これは外から見ているだけでは分かりません。

一等地の商業施設は、最初から矛盾を抱えている

都内一等地の商業施設には、そもそも大きな矛盾があります。

・立地がよい。
・だから賃料が高い。

賃料が高いから、出店できるテナントは限られる。

・施設側が本当に入れたい店。
・街の個性をつくる店。
・意外性のある店。
・少し尖っているけれど魅力のある店。

そうした店が、必ずしも高い賃料を負担できるとは限りません。
一方で、高い賃料を払えるテナントばかりを集めると、館全体の個性が弱くなることもあります。

つまり、
・入れたいテナント。
・入ってくれるテナント。
・賃料を払えるテナント。
・施設価値を高めるテナント。

これらは、必ずしも一致しません。
一等地の商業施設とは、この矛盾を覚悟でつくるしかない事業です。
その制約の中で、どこまで施設全体の文脈を守れるか。
そこに、本当のリーシング力とキュレーション力が問われます。

一流を集めても、一流の体験にはならない

一等地の大型商業施設には、一流のプレイヤーが集まります。

・一流のデベロッパー。
・一流の建築家。
・一流のデザイナー。
・一流のブランド。
・一流の飲食店。
・一流の広告。

それぞれは優れています。
しかし、それらを並べれば自動的に魅力的な施設になるわけではありません。
商業施設は、部品の集合ではなく、体験の設計だからです。

・どの店を入れるか。
・どの順番で見せるか。
・何と何を隣り合わせるか。
・上層階へ行く理由をどうつくるか。
・平日に来る人をどう設計するか。
・施設全体として、どんな意味を持たせるか。

これらを編集する力が必要です。
つまり、商業施設の勝負はキュレーションにあります。

景気変動も、外からは見えにくい

商業施設の成否は、景気変動にも左右されます。
開業当時は正しかった戦略が、数年後には通用しなくなることがあります。

・インバウンド需要の変化。
・消費者行動の変化。
・物価上昇。
・人件費上昇。
・ECの拡大。
・働き方の変化。

こうした環境変化は、商業施設に大きく影響します。
ただし、外から見ている人には、どこまでが施設側の問題で、どこからが景気や時代変化の影響なのかは分かりません。
だからこそ、結果だけを見て、単純に成功・失敗を断定するのは危険です。

商業施設は、完成した瞬間に評価が決まるものではありません。
完成後に、時代の変化に合わせて文脈を更新し続けられるか。

そこが本当の勝負になります。

AIもキュレーションできるのではないか

ここで、よくある反論があります。
「AIもキュレーションできるのではないか」

確かに、AIは候補を集めるのが得意です。

・見落としを防ぐ。
・比較する。
・分類する。
・選択肢を広げる。
・過去事例を参照する。

こうした作業では、とても有効です。
AIは、当たり前の視点の漏れを防いでくれます。

今回のように、商業施設を評価するときも、
人流だけでなく、

・賃料収入、
・稼働率、
・撤退後のリーシング、
・テナント採算、
・景気変動、
・オーナーの投資回収。

そうした視点を整理するには、AIは役に立ちます。

AIが苦手なもの

一方で、AIがまだ苦手なものがあります。
それは、

・一見すると常識外れなのに、妙に魅力がある。
・普通なら選ばないのに、その場所には合っている。
・リスクがあるのに、なぜか面白い。
・尖っているのに、センスがいい。

という判断です。
これはデータだけでは説明しにくい世界です。

多くの人が反対しそうなのに、結果的に街の象徴になる店。
業界の常識から外れているのに、強いファンを生む施設。

そうした発想は、人間の違和感や直感から生まれることが多いのです。

AI時代のキュレーション

だから、AIと人間は競争するのではなく、役割分担するべきです。

・AIで普通の選択肢を網羅する。
・AIで視点の漏れを減らす。
・AIで判断材料を整理する。

そのうえで、

・人間があえて外す。
・人間が組み合わせる。
・人間が順番を変える。
・人間が意味を与える。

そこから新しい文脈が生まれます。

AIは平均点を上げる。
人間は平均点から美しく外れる。

これが、AI時代のキュレーションです。

まとめ~商業施設を見る目とAI時代の不動産バリューアップ

商業施設に限らず、ビルや収益不動産の価値は、外から見える印象だけでは判断できません。

・空室がある。
・人が少ない。
・建物が古い。
・共用部の印象が弱い。
・用途が今の需要に合っていない。

こうした現象の奥には、賃料、リーシング、運用、改修余地、用途変更の可能性、投資回収など、複数の要素が関わっています。
AIは、そうした視点の漏れを防ぐうえで有効です。
しかし、実際の不動産バリューアップでは、建物ごとの条件、地域性、テナント需要、法規制、工事コスト、運用後の収支を読み取り、どこに手を入れるべきかを判断する現場知が必要です。

CUSTOM BUILDでは、リノベーション、コンバージョン、セットアップオフィス化、共用部改善、PM/CMなどを組み合わせ、ビル・収益不動産の価値向上を支援しています。
AIで選択肢を広げ、人間の現場知で方向性を見極める。
それが、AI時代の不動産バリューアップだと考えています。

執筆:プロパティー・パートナーズ株式会社
営業本部 クリエイティブディレクター

ビル・不動産バリューアップ支援
プロパティー・マネジメントサービス

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