弱点を強みにする視点が大事
(1)柱のある貸室をリーシングしやすい空間に変える工夫
オフィスの空室対策では、立地や賃料、設備条件だけでなく、貸室を見たときに「ここで働くイメージが持てるか」が重要になります。
特に、面積がそれほど大きくない区画や、整形ではない貸室、室内に独立した柱がある貸室では、内覧時にデスクレイアウトを想像しにくい場合があります。
図面上では一定の面積があっても、実際に室内を見ると、
「デスクは何席入るのか」
「柱が邪魔にならないか」
「会議や打ち合わせスペースは取れるのか」
「この形で本当に使いやすいのか」
といった不安が生まれやすくなります。
しかし、こうした一見デメリットに見える条件も、見せ方を工夫することで、リーシング上の強みに変えられる場合があります。
実際に合った事例では、約26坪のオフィスフロアについて、デスクレイアウトの提案と、柱を活用したCGイメージを作成しました。その結果、入居検討者がこのプランを気に入り、成約につながり、さらに、成約後にこのCGを参考にして内装やレイアウトも行われたそうです。
(このページで使用しているオフィス画像は実在しないCG画像です。)
(2)空室のままでは使い方が伝わりにくい
何も置かれていない空室は、きれいに見える一方で、入居後の使い方を具体的に想像しにくいことがあります。
特に、本件のように室内に独立した柱がある場合、空室写真だけでは、柱の存在が目立ちやすくなります。
・柱があることで、デスクを並べにくそうに見える。
・動線が取りにくそうに見える。
・空間が分断されているように見える。
こうした印象は、内覧者にとって小さくない不安材料になります。
もちろん、柱は構造上の条件であり、簡単になくすことはできません。
しかし、重要なのは柱そのものを消すことではありません。
「この柱をどう活かせるか」
「弱点を強みに変える方法はないか」
という視点で考えることです。
オフィスの空室対策では、条件の良い部分だけを見せるのではなく、弱点に見える部分をどう扱うかが重要になります。
(3)デスクレイアウトを見せることで、不安を減らす
本件のリーシング用のサイトや販促資料では、まず実際にどのようなデスク配置が可能かをCGで見せました。
約26坪のオフィスフロアに対して、デスク、チェア、複合機、収納、打ち合わせスペース、植栽などを配置し、入居後の働き方を具体的にイメージできるようにしました。
単に「何席入ります」と説明するだけでは、入居検討者には伝わりにくい場合があります。
しかし、立体的なCGでデスクレイアウトを見せると、
「この人数なら使えそう」
「柱があっても意外と邪魔にならない」
「ここに複合機を置ける」
「打ち合わせスペースも取れそう」
といった判断がしやすくなります。
空室を見て不安になるのではなく、入居後の働く姿を想像できるようにすること。
これが、リーシング資料としてのデスクレイアウトプランCGの大きな役割です。
(4)弱点・デメリットである柱を、空間演出に活用する
今回のプランで特に重要だったのは、室内の邪魔になる柱を単なる障害物として扱わなかったことです。
この微妙な位置に柱があると、デスクを一直線に並べにくくなったり、視線が遮られたり、レイアウトの自由度が下がるように感じられます。
しかし、このプランでは、その柱を「邪魔なもの」として処理するのではなく、空間演出の起点として活用しました。具体的には、柱まわりにフェイクグリーンを組み合わせ、さらに飾り棚のような見せ方を加えることで、オフィス内のアクセントとしてCGに落とし込みました。
弱点を隠すのではなく、強みに変える。
その発想から生まれたのが、この柱活用のCGでした。
無機質な柱がそのまま立っていると、どうしても邪魔に見えます。
しかし、グリーンや棚、照明、アート的な要素を組み合わせることで、柱は空間の印象を高めるポイントになります。
つまり、レイアウト上の制約だったものを、オフィスの個性に変えることができるのです。

こちらは、実在のケースを参考に作ったCGです。
(5)柱のあるオフィスは、見せ方で印象が変わる
このような柱のあるオフィスは、本来はデメリットであり、弱点です。
しかし、そういう常識を捨てて、逆に「強みにできないか?」という逆転の発想で柱の活用を考えてみることが大事です。
もちろん、レイアウト上の制約になることはあります。
しかし、その柱をどう見せるかによって、入居検討者が受ける印象は大きく変わります。
この事例では、柱まわりにフェイクグリーンを設置し、このオフィス内装のアクセントとすることを考えました。
さらに飾り棚として見せれば、そこを演出やブランドイメージづくりにも使えます。
アートや照明と組み合わせれば、単なる構造物ではなく、空間の見せ場にすることもできます。
大切なのは、柱を「邪魔なもの」として終わらせないことです。
柱があるから使いにくい、ではなく、柱があるから空間に特徴をつくれる。
そう見せることができれば、物件の印象は変わります。
(6)CGが、内装とレイアウトの参考になった
実際のプランでは、空室の状態、柱を活用した内装イメージ、実際のデスクレイアウト案を比較できるようにしました。
その結果、入居検討者がこの提案を気に入り、成約につながりました。
さらに、成約後には、このCGイメージを参考にして、実際の内装やデスクレイアウトも行われたそうです。
これは、リーシング資料としてのCGが、単なるイメージパースにとどまらず、入居後の空間づくりにも影響した事例といえます。
そして重要なことは、このCGプランでは、実際に内装リノベーションを実施したわけではないことです。
もちろん、実際にリノベーションした方がいいケースもありますが、この事例のように、テナント候補者にCGでステージングして、「弱点と思える柱」を「こういう使い方ができますよ」というイメージで見せてあげる、というリーシング手法を使うだけでも、効果は大きいケースがあるということです。
貸室の魅力を伝えるための資料が、結果的に入居者の内装計画のたたき台にもなったという点で、非常に実務的な効果があったケースです。
(7)生成AIによるステージング画像には注意が必要
近年は、生成AIを使うことで、見栄えの良いオフィスステージング画像を比較的簡単に作れるようになってきました。
空室写真をもとに、家具を置いたり、グリーンを加えたり、内装の雰囲気を変えたりすることも可能です。
リーシング資料や提案資料の表現方法として、AI画像の活用余地は今後さらに広がっていくと思われます。
しかし、不動産業で使う場合には、大きな注意点があります。
それは、実際と異なるプランや、実際には再現できないレイアウトを、実際のオフィスで実現できると誤解させるように見せてはいけないということです。
生成AIは、見栄えの良い画像を作ることは得意です。
しかし、汎用的な生成AIにアバウトなプロンプトを入れて作らせると、実際には置けないデスク配置や、通路幅が確保できないレイアウト、柱や壁の位置と整合しない空間を、いかにも自然な完成イメージとして作ってしまうことがあります。
ここに、生成AI活用の大きな落とし穴があります。
これが、よく言われる生成AIの「あと一歩が難しい」という問題です。
特に、不動産業での「募集」という業務における生成AIの活用では、まだこの点に課題があります。
見た目だけなら、それらしく作れる。
しかし、実務で使える精度にするには、寸法、動線、家具サイズ、柱位置、設備条件などを確認する必要があります。
正確なCADデータや2D図面をもとに3D化する専用ソフトであれば、実際に市販されているデスクやチェアのデータを使い、ある程度現実に即したシミュレーションが可能です。
一方で、一般的な生成AIだけで作成した画像は、あくまで「想像上のイメージ」として扱う必要があります。
(事実誤認や優良誤認をさせない使い方や注意書きが欠かせません。)
将来的には、不動産やオフィスレイアウトに特化したAIが発展し、より簡単に正確なレイアウト提案ができるようになるかもしれません。しかし、2026年5月時点で一般的に使われている汎用の生成AIを活用する場合には、注意が必要です。
見栄えの良い画像を作ることと、実際に成立するレイアウトを提案することは、同じではありません。
だからこそ、オフィスの空室対策でCGやAI画像を使う場合には、図面、寸法、家具サイズ、動線などを確認したうえで、現実に実行可能なプランとして見せることが大切です。
(8)小規模オフィスほど、レイアウト提案が効く
広いオフィスであれば、多少使いにくい部分があっても、レイアウトで吸収しやすいことがあります。
しかし、20坪台から30坪前後のオフィスでは、柱や室内形状の影響が大きくなります。
1本の柱があるだけで、デスク配置の印象が変わります。
通路幅、席数、収納、複合機、打ち合わせスペースの取り方も、慎重に考える必要があります。
だからこそ、小規模から中規模の貸室で、特に不整形な部屋ほど、事前にレイアウト案を見せることが有効です。
「この区画は使いにくそう」と判断される前に、
「こう使えば、意外と使いやすい」と伝える。
この差が、空室対策では重要になります。
特に、内覧者がその場でレイアウトを考えるのは簡単ではありません。
物件を見る側に想像を任せすぎると、弱点ばかりが目につくこともあります。
(9)元付仲介者には、見せ方を提案する役割がある
一方で、実務上は、この程度の小規模オフィスでは、デスクレイアウトまで作成する手間やコストを惜しみ、写真と間取り図だけでリーシングするケースが多いのも現実です。
大規模オフィスであれば、成約時の仲介手数料も大きくなるため、広告費用や販促資料の制作費を相対的にかけやすくなります。
そのため、デスクレイアウトやイメージパースを募集資料に掲載することも珍しくありません。
しかし、小規模オフィスでは、一般的な仲介業務の範囲内で、成約前提の手数料だけを見込んで動く場合、そこまで手をかけにくいというのが仲介業者の本音でしょう。
だからこそ、オーナー側に立つ元付仲介者には、物件のリーシング難易度に応じて、通常の募集方法だけでよいのか、それとも追加の見せ方が必要なのかを判断する役割があります。
空室が長期化しそうな貸室や、柱、不整形、レイアウトの難しさなど明確な弱点がある貸室では、単に募集条件を掲載するだけでなく、オーナーに対して、デスクレイアウト案やCG制作などの販促費用をかける提案をすることも重要です。
これは、単なる広告費ではありません。
貸室の使い方を可視化し、入居検討者の不安を減らすためのリーシング戦略です。
だからこそ、貸す側が先に使い方を提案することが大切です。
(10)空室対策は、条件変更だけではない
オフィスの空室対策というと、賃料の見直し、募集条件の変更、原状回復、共用部の改善などがまず考えられます。
もちろん、それらも重要です。
しかし、条件を変える前にできることもあります。
それが、見せ方の改善です。
同じ貸室でも、空室のまま見せるのか、デスクレイアウトを見せるのか。
柱を邪魔なものとして見せるのか、空間のアクセントとして見せるのか。
ただの募集区画として見せるのか、働く場として見せるのか。
この違いによって、入居検討者の印象は変わります。
空室対策とは、単に弱点を消すことだけではありません。
弱点に見える部分を、どう活かすかを考えることでもあります。
(11)まとめ:リーシングには「弱点を強みに変える」空間の翻訳が必要になる
オフィスのリーシングでは、物件の条件をそのまま伝えるだけでは、魅力が十分に伝わらないことがあります。
特に、柱がある貸室や、整形ではない貸室、デスクレイアウトが難しそうに見える貸室では、入居検討者が使い方を想像できるようにすることが重要です。
今回の事例では、独立した柱という弱点に見える要素を、フェイクグリーンや飾り棚を活用した空間演出に変えました。
さらに、デスクレイアウトのCGを作成することで、入居後の使い方を具体的に見せました。
その結果、プランを気に入った入居検討者が成約し、実際の内装やレイアウトにもCGが活用されました。
オフィスの空室対策では、弱点をただ隠すのではなく、強みに変える視点が必要です。
空室を、入居後の働く場として翻訳すること。
それが、リーシングを前に進めるための有効な方法のひとつです。













