「シェア型セットアップオフィス」とは?|曖昧な業界用語が生れる背景|ビルオーナー様向け

目次

はじめに~「曖昧な業界用語」は今日もどこかで生まれているかも?

「セットアップオフィスとは|多様化した内装形態を実例付で徹底解説|メリット・デメリットや営業現場の解説付き」と言う記事では、この用語の使われ方が、英語直訳の意味ではなく「和製業界用語」として使われている実態をご説明しました。
不動産業界では、なぜこのように確定的なルールが存在しないまま、曖昧な業界用語が流行するのか、その背景について、自らの実例(まだ業界用語まで一般化していませんが)をもとにご紹介します。

1.「PREMIUM OFFICE 麹町」のケースでわかる「曖昧な業界用語」が生れる背景

シェア型セットアップオフィス

PREMIUMOFFICEシリーズはシェアオフィス、レンタルオフィスのブランドですが、「PREMIUM OFFICE 麹町」は「シェア型セットアップオフィス」とも言える内容になっています。(契約形態がシェアオフィスの「サービス利用契約」でなく「不動産賃貸借契約」)

右のオフィス家具の無い執務室は「普通内装のオフィス」のように見えますが、実際は、フロア内のシェアスペースに、トイレと給湯設備の他に共用の「会議室」と「レセプション」があり、入居者はオフィス家具のみを調達すれば、すぐにビジネスをスタートできる状態です。

契約形態によって呼び方を変えるというのも、確定的な業界ルールではありませんので、シェアオフィスやレンタルオフィスも英語的な意味での広義の「セットアップオフィス」の一つである、と言い張ることもできなくはありません。

しかし、そういう「広義の意味のセットアップオフィス」ということを言い出すと、普通内装の一般的なオフィスも含めて、「スケルトンオフィス」以外は全て「セットアップオフィス」ということになります。

また、その一方で「全ての内装が完了したオフィス」だけを「セットアップオフィス」であると定義すると、上記の「麹町」の場合は、左側のオフィス家具まで設置した状態だけが「セットアップオフィス」である、ということになってしまいます。

しかし、現状の業界用語としての「セットアップオフィス」の実態は、こうした使われ方はしていません。
営業現場の人にしかわからない、誤解を招きやすい業界用語と言えるでしょう。

2.「シェア型セットアップオフィス」なんて用語はまだ誰も使っていない?

「シェア型セットアップオフィス」という言い方も、この形態の賃貸オフィスも、まだかなりレアケースで、当社が自分でセールストーク的に時々使っているだけで「業界用語」として一般化したオフィス形態とまでは言えない状態です。

ケースバイケースで「シェアオフィス」とだけ言っていたり、「シェア型レンタルオフィス」と言うこともありますが、契約形態が「不動産賃貸契約」なので、「シェアオフィス」や「レンタルオフィス」と言うのは「ルール違反」だろう、とお叱りを受けそうです。

しかし呼称の「厳格なルール」は存在しない世界なので、ケースバイケースで、セールストーク的にお客様にアピールしやすい言葉を、その都度選んで使っています。

これが、同じような形態のオフィスが増加して、皆が同じワードで募集するようになると「シェア型セットアップオフィス」という用語も業界内で市民権を得て人気が出るようになって、当社も「シェア型セットアップオフィス」という用語一本で募集するかもしれません。

「セットアップオフィス」という用語も、このようにして生まれた、とても曖昧な業界用語の一つです。

3.業界慣行になってない用語の使い方は「誇大広告」か?

法令等で確定された用語でもないし、業界慣行になっていないような用語を使って広告等で募集するとどういう問題になるでしょうか?

どういう言葉を使って不動産広告で募集するかのルールは「誇大広告違反」に該当するかどうか、が問題となると思われますが、これに違反しない範囲ならば、セールス的に有利かどうかで貸主側が選んだ言葉で募集してかまわないことになります。

裁判にでもなって、「慣用句の状態でも、事実誤認させる用語の使用は誇大広告であり、入居検討者に損害を与えた」とかいう判例でも生まれれば、業界としての用語のルールが定められるかもしれませんが。

実際は、かなり危ない用語を使ったとしても(例えば間仕切り設備のない「普通内装のオフィス」を英語の内装があるという意味で「セットアップオフィス」として募集したとしても)「内見」せずに借りるテナントは殆どいませんので、それで損害賠償請求する裁判など成立しませんから、今後もよほどのことが無い限り、明確な用語の定義、確定的なルールが生れることはないと考えられます。

しかし、そのような募集方法は、効果が低いか、あるいは逆効果になりかねませんので、実際にそのような募集をする貸主はまずおられないでしょう。

シェアスペースに共用のレセプションと会議室が「セットアップ」されている「PREMIUM OFFICE 麹町」

4.独自用語を使うメリットとデメリット

法令違反にならない限り、独自の用語を使って募集することは自由なわけですが、当然ながら、それにはメリットとデメリットがあります。

①メリット
・他社と差別化されたブランドイメージやオリジナリティをアピールできる。
・目新しさが感じられて、新しもの好き、クリエイティブな層(アーリーアダプター)にアピールできる。

【アーリーアダプターとは】
アーリーアダプター( early adopter)とは、特定の会社、製品、技術を早期に導入する初期の顧客層を指すマーケティング用語です。
この用語は、社会学者のエヴェリット・ロジャースの著書『Diffusion of Innovation』(邦題: イノベーション普及学)に由来しています。
このように、マーケティング的に言えば、革新性を好む「アーリーアダプター」という層が存在しますので、その層をターゲットとするような募集には効果的です。
「セットアップオフィス」と言う用語を使い始めた人は、まさにこの効果を狙っていたものと想像します。

②デメリット
業界用語にまで一般化していない用語を使って募集しようとすると、ネット集客が当たり前となった現代では、検索してもらえない、探してもらえない、という広告として不利な状態になります。

また、オリジナリティの高い、真似のしづらい技術やデザインなどがあると、追随者が現れにくく、業界用語にまで一般化しづらい、という点がありますが、この点は、メリットと考えるか、デメリットと考えるか、ケースバイケースでしょう。

5.独自用語は奇抜さよりも「ナルホド感」が大事

このように、大きなデメリットがあることを承知の上で「独自用語」を使って募集しようという以上、メリットの部分を最大限に効果的にすることが大切です。

それには、単に奇抜で珍しい、訳の分からない言葉を使うよりも、「なぜこのワード?」と思った人が、その意味を知った時に「ナルホド!」と納得感がある言葉が効果的なはずです。

「ナルホド」と納得することは、そのメリット、効用について共感してもらえた、ということです。

6.曖昧な「オフィス形態」の用語の裏にある本質~「ターゲティング」と言うリスクテイク戦略

今回、このようなテーマで記事を書いたのは、言葉遊びのご紹介のためではありません。

「セットアップオフィス」という業界用語が生れたのも、最初は、誰かがみんなと違うオフィス形態を採用して、それをいかにまだそういう形態を知らないテナント候補の人たちに情報を届け、その心を動かして入居を決めてもらうか、というトライアンドエラーに果敢に挑戦していく中で生まれた言葉でしょう。

こういう曖昧な新しい業界用語が生れた事情の背景には、こうしたリーシングの苦労の歴史があります。

そして、この「セットアップオフィス」も含めて、「普通」とか「一般的」と言われるものとは異なる、新しい形態の用語が生れていることの本質は「多様なニーズに向けてカスタマイズする」という差別化戦略にチャレンジすること、つまり、万人向けの可もなく不可もない「普通」なものから、「特定のニーズにだけ合わせる」=「相手を選ぶ」というリスクを取ったリーシング戦略に舵を切った人がいたという歴史の積み重ねと言えるものです。

それだけ「苦労するかもしれないリスクテイク」を取って生まれた言葉ですから、本来は安易に飛びついて簡単に成功するような代物ではないとも言えます。

「人気があるらしいから真似すれば上手くいくかも」と考えて「セットアップオフィス」にしてみたら、なかなかテナントが決まらなくて難航している、とお悩みのビルオーナー様もおられるかもしれませんが、そもそも、このように難しいリーシングを覚悟してやるべきものですから、事前のリーシング検討が不十分であれば、上手くいかなくても不思議はありません。

相手を選ぶというリスクテイクをする戦略だということを十分に認識して着手していれば、「セットアップオフィス」の工事はせずに「普通内装のオフィス」できめられていたかもしれないし、あるいは、セットアップ工事の内容をもっと別の形にできていたかもしれません。

7.「セットアップオフィス」の空室募集に難航中のビルオーナー様へ~リカバリー策はあるかもしれません。

高いコストをかけて工事してしまったものを、今さら元に戻すのはコストもかかる、かといって、賃料を大きく下げたくはない、といった状態に陥って、「セットアップオフィス」のテナント募集に難航されているビルオーナー様がおられるかもしれません。
しかし、大幅に賃料を値下げしてしまう前に、もしかすると、リカバリー策がまだあるかもしれません。

その方法とは…

ここから先は非公開の資料となります。(ビルオーナー様限定)

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【編集後記】「セットアップオフィス」の本当の意味は「BSS Office」!?

最後に、もし英語的に「セットアップオフィス」を正しく言い換えるならばどう表現すればよいのか考えてみました。

本来は「モア・セットアップオフィス」とか「スペシャル・セットアップオフィス」とか言うべきかも…
いやこれではまた私の勝手な和製英語なので、ChatGPTに翻訳させてみました。

さて、皆さんが、「セットアップオフィス」という用語が一般的ではないときの空室募集の担当者だったら、どの用語を選んでいたでしょうか?

個人的には、最も実態に近く、かつ短く表現できて日本人にも意味が通じそうな英語表現としては、下記の中の
「Beyond Standard Office」を使って「Beyond Standard Setup Office」とするのが良さそうな気がしましたが、少し長すぎますね。

短く「BSS OFFICE」とすると「え、それどういう意味」と思わせることができて、セールス的に注目してもらうにはいいかもです。とは言え、もはやこれだけ一般化した今となっては、今さらですが。

しかも、「ハーフ・セットアップオフィス」に至っては「Partial Beyond Standard Setup Office」という訳の分からない英語になってしまうという問題も…

また、ついでに、「居抜きオフィス」というのも、もっとマシな言い方※がないか考えてもらいました。
AIがもっと早く生まれていたら、「居抜き」ではなく、もっとスマートな業界用語が生れたかもですね。
AIも「使い方次第」です。

※「居抜き」の語源は諸説あり、もともとは不動産用語ではない、との説もあります。

【ChatGPTへの質問内容~その1】
「日本では、一定範囲の内装が既にあるのが普通のオフィスの状態でしたが、その一定範囲を超えた内装をしたオフィスをキャッチーに表現できる英語はありませんか?」

【回答事例】
「一定範囲を超えた内装をしたオフィス」をキャッチーに表現する英語のフレーズとして、以下のようなものがあります:

– **Enhanced Office Space**(強化されたオフィススペース)
– **Beyond Standard Office**(標準を超えたオフィス)
– **Elevated Office Design**(高められたオフィスデザイン)
– **Premium Interior Office**(プレミアムな内装のオフィス)
– **Upgraded Office Environment**(アップグレードされたオフィス環境)
– **Superior Office Fit-Out**(優れたオフィスのフィットアウト)

これらのフレーズは、標準的なオフィス内装を超えたことを示し、魅力的な印象を与えます。
(以上は「ChatGPT」による出力)

AIを使う場合は、質問の仕方をかなり工夫しないと、特殊な業界の専門用語を正しく説明させることはまだ難しいようです。

【ChatGPTへの質問内容~その2】
「居抜き(前テナント使っていた内装をそのまま使う)オフィスを、中古の悪いイメージがしないキャッチーな言い方の英語で表現してみて下さい。」からスタートして何度か質問して、最後に「日本人にもわかる短い和製英語を作ってみて」とお願いしてみました。

【回答事例-英語でキャッチーに】

家具が揃っているとは限らない場合にも使える短い言い回しとしては、以下のようなものが適しています:

1. **Move-in Ready Office**: 入居準備完了のオフィス
2. **Pre-fitted Office**: 前のテナントによって内装が整えられたオフィス
3. **As-is Office**: 現状のまま利用できるオフィス
4. **Turnkey Office**: すぐに使えるオフィス
5. **Pre-configured Office**: 前のテナントによって設定されたオフィス

これらの表現は、家具の有無に関係なく、前テナントの内装がそのまま使えるという点を強調しています。

【回答事例-短い和製英語で】

日本人にもわかりやすく、短い和製英語を作るなら、以下のような表現が適しています:

1. **カスタムインオフィス**: カスタマイズ可能な入居準備完了のオフィス
2. **アダプトオフィス**: 柔軟に対応可能な現状利用オフィス
3. **プレフィットカスタムオフィス**: 前のテナントの内装が整っているがカスタマイズ可能なオフィス
4. **フレキシオフィス**: 柔軟に使える入居準備完了のオフィス
5. **バリアブルオフィス**: 多用途に対応できる現状利用オフィス

これらの和製英語は、前のテナントの内装が整っていることを示しつつ、入居者が自分のニーズに合わせて調整できる余地があることを短くキャッチーに表現しています。


(以上は「ChatGPT」による出力)

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