セットアップオフィスにはリーシング戦略が不可欠|多様性の時代の空室対策|ビルオーナー様向け

目次

1.「セットアップオフィス」を事例に考える、多様性の時代のオフィスの「空室対策」とは?

(1)はじめに

昭和から平成、そして令和の今、オフィスの「空室対策」の方法も、時代の変化に応じて柔軟かつ多様に考えていく必要があります。
今回は、最近の「セットアップオフィス」への人気の高まりに注目して、貸主、ビルオーナー様の立場から、この「セットアップオフィス」についての成功の条件(「失敗する原因」も)とは何かを探り、令和時代の「オフィス」の空室対策をどうすべきかについて考察していきます。

まずは、ビルオーナー様が今の時代に「オフィス形態」を考える上での主なキーワードを列挙してみましょう。

①時代背景を映す流行ワード
・働き方改革
・アフターコロナ第5類移行後はアフターでいいかと思います)
・ニューノーマル
・多様性
・SDGs
・ターンキーソリューション
・アジャイル型

②オフィスの概念的な形態ワード
・クリエイティブオフィス(「フルパッケージ型」クリエイティブオフィス
・フレキシブルオフィス
・サテライトオフィス
・ABW
・タッチダウンオフィス
・行きたくなるオフィス

③オフィス形態に関するワード
・普通のオフィス(=「普通内装」の一般的なオフィス)
・デザイナーズオフィス
・居抜きオフィス
・セットアップオフィス(ハーフ・セットアップオフィス)
・スケルトンオフィス(ハーフスケルトンオフィス)
・シェアオフィス、レンタルオフィス、サービスオフィス

④施工等に関するワード
・原状回復工事
・リノベーション
・コンバージョン

・プロジェクトマネジメント(PM方式)、コンストラクションマネジメント(CM方式)

いかがでしょうか?

ビルオーナー様にとっては、上記のような多様なオフィス形態のワードが溢れる時代となり、どのようなオフィス形態にすればオフィスの賃料低下を避けて稼働率を高く維持する「空室対策」になるのか、非常に悩ましい状況にあるのではないでしょうか。

これらすべての内容となると膨大になるため、今回はビルオーナー様の立場からみた「セットアップオフィス」というテーマを通じて「オフィス形態と空室対策」の本質に迫ってみることとします。

それによって、これらの多様なオフィス関連のワードをひとつひとつ説明せずとも、「テナントニーズの本質と時代の変化」という一本の糸を通して理解が深まり、ビルオーナー様が空室対策を考える上での一助になるような内容にできるものと思います。

(記事の後半をご覧になるには資料請求が必要となります。)

なお、セットアップオフィスの基礎知識についてはこちらの記事をご覧ください。
「セットアップオフィスとは|多様化した内装形態を実例付で徹底解説|メリット・デメリットや営業現場の解説付き」

(2)「セットアップオフィス」の工事セールスに安易に飛びつくのは危険

最近の「セットアップオフィス」の人気に乗じて、ビルオーナー様に「セットアップオフィス」にしてみませんか、という提案をする施工会社等も増えてきたのではないでしょうか?

確かに、最近では「セットアップオフィス」の人気が高まって早く決まりやすい、という声も聞こえてくる機会も増えていると思いますので、オフィスビルのオーナー様にとっては、そうした提案が気になるのは当然の事です。

しかし、安易にこうしたセールストークに乗っかって工事を依頼するのは危険です。
工事会社からすれば、通常の内装のオフィスに原状回復するよりも、工事金額が多額になる「セットアップオフィス」へのリノベーション工事の方が、美味しい仕事です。

しかし、通常内装に戻す「原状回復工事」と違って、「セットアップオフィス」へのリノベーション工事は、実は次元の異なるレベルで慎重な判断を要するものです。

セットアップオフィスの場合、その内装工事のプランの巧拙がその後のリーシングを大きく左右するため、「リーシングノウハウ」の有無が不明の相手が提案してくるプランをそのまま受け入れて工事を行ってしまうと、後で後悔するかもしれません。

けっして、施工会社が儲け主義だけでいい加減な提案をしてくる、と言う悪口を言っている訳ではありません。

大事なことは、「ウソをつかない良い人」なら提案を信用してもいい、のではなく「リーシングのプロフェッショナルなノウハウ、経験」に基づいた適確な内装工事プランを提案できる先なのかどうか?ということです。

「セットアップオフィス」、あるいは、その他のオフィスの「リーシングの難しさや苦労」も実際に経験した実戦経験に基づくプランニングと、単に「人気が高まっているから他物件を真似して作っておけば大丈夫だろう」という程度のプランニングでは、内容に大きな差が出るはずです。
もちろん、後者のプランは失敗する可能性が大です。

それだけ「セットアップオフィス」というオフィス形態は、高度なプランニングとリーシングが必要なオフィス形態であるということを理解したうえで慎重に検討する必要があります。

(3)「セットアップオフィス」の本質は「相手を選ぶ戦略※」であること

「セットアップオフィス」は「普通内装のオフィス」よりも、オフィスレイアウトに関わる会議室等の間仕切り設備を予め設置したり、オフィス家具等の什器備品まで用意する訳ですから、そのレイアウト構成や、オフィス家具のデザイン的な嗜好がマッチする相手には便利かもしれませんが、ニーズに合わない場合は、立地や賃料水準が気に入っても、敬遠されるかもしれません。

「普通内装のオフィス」というのは、テナントニーズの平均的なニーズに合わせて標準的な内装仕様として一般化してきた経緯があり、そういう意味では、最も「相手を選ばない」、万人向けの内装のオフィス、ということができます。

「セットアップオフィス」は、そういう万人向けの普通内装のオフィスよりも、特定ニーズある相手にターゲティングした「相手を選ぶ内装」のオフィスであるということを認識する必要があります。

※「相手を選ぶ」という言い方は上から目線的ですが「特定のニーズのある客様に選んでいただく」という意味を便宜的に短く表現したものでありご容赦ください。

(4)「相手を選ぶ戦略」が悪い訳ではないが「マーケティング意識」が必要

「多様性の時代」ということが言われる今、不動産以外の世界では「可もなく不可もなく」のような平均的な製品やサービスの人気が落ちて、なかなか売れにくくなる時代の変化の中で、「特定の顧客層に的を絞って、その層に深く刺さる製品やサービス」を提供する、というマーケティング戦略を採用することは、もはや珍しくはありません。

製品によっては、もはや、それ以外に収益を上げられない、ビジネスとして成立しない、というところまで時代の変化が進んでいるケースもあるくらいなので、この戦略自体が悪いということではなく、むしろ、積極的に採用していく方がいいケースもあるでしょう。

しかし、そのためには、不動産以外の他の業界が当たり前のように日頃から行っている「的確なマーケティング」の戦略立案、意識、実行が必要不可欠となります。

(5)失敗の要因は「内装工事のプランニング」以外にリーシングの巧拙にもある

今の「セットアップオフィス」には「内装、オフィス什器備品まで全て完成させたフル・セットアップ状態」のものだけでなく、その一部の範囲にとどめる「ハーフ・セットアップオフィス」という2つの方法が一般化しています。

特に後者は「ハーフ」と言っても、どこまで内装するかは貸主側の判断で多様であり、どのような顧客にターゲティングするかという「マーケティング戦略」によって、「内装工事の範囲」のプランも異なってきます。

しかし、こうしていったん工事して作ってしまった後は、コストもかかっているため、容易に変更できなくると言うデメリットもあり、想定が外れてなかなかテナントが決まらず、空室期間が長期化する、といった事態になるケースもあり得ます。

こういった失敗の要因には、事前検討が不十分で安易に他物件の真似をしたプランで作ってしまった、というケースもあるかもしれませんが、もう一点は、不動産業界特有の問題として「リーシングの巧拙」という要因も絡んでいる可能性があります。

(6)「セットアップオフィス」成功の条件とは~的確なマーケティング戦略×巧みなリーシング戦術

このように、「相手を絞り込んだオフィス形態」を成功させるために必要な条件とは、不動産以外の製品やサービスと同じで、プラン決定における「的確なマーケティング戦略」と、その「製品やサービスの巧みな販売戦術(=賃貸オフィスの場合はリーシング)」の両方が必要です。

このことは、セットアップオフィスに限らず重要な「空室対策」の本質ですが、不動産業界では、このことをあまり意識せずに何とかなってきた、というケースも多いため、そういう苦労を経験していない場合に急に課題にぶつかると、方法を間違えてしまったり、他業界では当たり前にやられていることをやっていなかったり、というオペレーション的なミスをしがちな部分が無いとは言い切れません。

(7)「多様性の時代」の「空室対策」には従来以上にマーケティングセンスが大切

「働き方改革」や「アフターコロナ」、「ニューノーマル」、といった「多様性の時代」を映すこれらのフレーズが飛び交う状況となった令和の時代の「空室対策」には、まさに全てのビルオーナー様にとって、旧来の上手くいっていたやり方がそのままでは通用しづらい状況が生れていると言えます。

ビル賃貸事業は、現在の市場ニーズを的確に把握しつつ、また、近未来も見通しながら、「多様なニーズ」に対して「多様な選択肢の中から最適な方法は何かを見出して実行する」ということが求められる状況に変化しており、従来以上に「マーケティングセンス」を問われる時代になったと言えるでしょう。

2.「ハーフ・セットアップオフィス」の施工事例

ハーフセットアップオフィス

(1)「ハーフ・セットアップオフィス」の内装プランのポイントとは?

通常の「セットアップオフィス(フルセットアップの状態)」に比べて、「ハーフセットアップオフィス」は、その内装をどこまで、どのようにするかの選択の範囲が広いだけに、内装プランがいかにマーケティング的視点からにて適切かを問われます。

その内装プランのポイントとは…

ここから先は別途資料になります。

(2)「工事して終わり」ではない当社のリーシングサポートとは?

不動産業界以外のマーケティング担当者が見ると「こんなので上手くいくわけがないよね?」と疑問に感じるようなリーシングが普通に行われている、という特殊な慣習、傾向が否定できないのが不動産業界です。

それはどういうことか…

ここから先は別途資料にてご提供しますので、ご希望のビルオーナー様はお問い合わせ下さい。

資料請求はビルオーナー様に限定させて頂いております。

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