テナントリーシングとは|空室対策|テナント誘致|ビルオーナー様向け

目次

1.テナントリーシングの「テナント」の意味

(1)「テナント」の意味から説明が必要な和製英語がはびこる不動産業界

不動産業界というのは、とにかく変な和製業界英語が一般化していて、はじめて聞く人には紛らわしい用語がたくさんはびこる業界です。
「テナント」という用語も代表的な変な和製英語の一つです。

つまり「英語の意味」で簡単にいえば「賃借人」です。しかし、不動産用語としては、マンション等の住居の賃借人は通常「テナント」とは呼ばれません。マンションの場合、住人は「居住者」や「住民」と呼ばれることが普通です。
英語では住居の賃借人も「テナント」と呼ばれるようですが、日本では、いつの間にかこのように使い分けされるようになってしまいました。

仲介市場で、住居の借り手(居住者)と商業スペースの借り手を区別して明確にする意図があったのかもしれませんが、こういう業界用語というのは、今から思えば、全くもって合理性が感じられないというか、よくわからないものが少なくありません。
たぶん、店舗テナント、オフィステナント、マンションテナント、みたいに使うのでは言葉が長くて面倒、商業ビジネス系はまとめて「テナント」、住居は「居住者」とか「住民」と言えば、どちらも3語に収まって言いやすい、みたいな感じで慣習化したのかもしれませんが…あくまでも私見です。

何で、英語と日本語なのか?となると、もはや全く経緯不明で「そこが変だよ、日本の不動産業界!」という感じですが。

(2)「誘致」という言葉が「テナント」のみで使われる理由~「住居」よりも難易度が高いから

「テナント」という用語に関連して、もうひとつ面白いのが「テナント誘致」という言い方です。
「誘致」を和製英語好きな不動産業界のもっと汎用的な別の業界用語言い方をすると「リーシング」ですが、「誘致」と「リーシング」では明確にニュアンスが異なります。

マンションのような住居では「住居リーシング」とは言っても「住民誘致」とは殆ど言いません。
つまり、「店舗」や「オフィス」のような商業区画のリーシングになってくると「テナント誘致」という言葉が出てくるのです。

さて、これはいったいどういうことでしょうか。「誘致」という日本語の言葉のイメージから言えることは、「住居」は「誘致」などということをしなくても貸せるけれど、「店舗」や「オフィス」のようなビジネス系の「テナント」に貸すためには「誘致」という言葉のニュアンスが持つような「誘導する」「誘う」という営業活動をしないといけない、というイメージです。

つまり、「住居」は、立地や物件スペックにあわせて相場賃料が形成されて、それに合わせて募集すれば大体決まるが、店舗やオフィスとなると、そう簡単に貸せない、効果的な「誘致活動」を行わないと、いつまでも決まらない、みたいなイメージをぴったり感じさせてくれる言葉です。

そして、変な和製英語がはびこる不動産業界にあって英語の「リーシング」という言葉が一般化したのにもかかわらず「テナント誘致」という言葉が普通に使われる現状は、実は、すごく実態に即していると言えます。

まさに、「店舗やオフィス」などの「テナント募集活動」である「テナントリーシング」においては「テナント誘致」の営業活動もすごく大事、といった使われ方が違和感がない、といえるほど、住居リーシングよりも、難易度が高いもの、というイメージは、間違ってはいないと言えるでしょう。

例えば、大きな商業施設のリーシング戦略においては、ターゲットとなりそうな事業会社に対して、直接、「こんな区画の募集をしますが、出店されませんか?」という、まさに「誘致」活動を行うことは珍しくはありません。
一方、賃貸マンションにおいては、今、空室を探している人に、募集情報を届けるという営業活動をするのが普通であって、「今度、こういう住居の募集をするので、こちらに引っ越しませんか?」みたいな「誘致」型の募集というのは通常は行われません。
特定の近隣マンションの住人に向けて募集広告をポスティングするといった営業は、「誘致」型とは言えますが、これも「住居リーシング」においては通常の募集活動の一つであって、わざわざ「誘致営業」みたいに言うことはあまりないはずです。

つまり、「テナントリーシング」においては、「住居リーシング」のように、募集広告を出して向こうから来てくれるのを待つようなリーシングだけではなく、ターゲット層を探してこちらから声をかけてみるような「テナント誘致」も行わないとならない、つまり、リーシング営業の難易度が住居よりも高い、というニュアンスを示す用語と言えるのです。

こういう言葉の意味を説明しているだけのようでいて、実は、「テナント誘致」という言葉が一般化した背景を考えるだけでも、「テナントリーシング」と「住居リーシング」における質的な違い、難しさの違いを感じ取ることができる、というご説明をさせて頂きました。

もちろん、「住居リーシング」にも、物件によってはそれなりの難しさがあり、「テナント誘致」の営業に通じるような施策を行わないと、なかなか満室にできないようなケースもありますが、店舗、オフィス系の「テナントリーシング」においては、1年でも、3年でも、5年でも、決まらない物件がある、住居であれば、決まらない場合は賃料を相場より少し下げてあげれば、2年も3年も空室になるというケースは稀です。(事故物件とかならあり得ますが。)

一方、店舗とかになると、そもそも賃料相場が住居ほど簡単に決められない、少し下げたくらいでは決まらない、といった難しさがあります。そういう「リーシング」の質的な難易度の違いが「テナント誘致」という言葉の中に見て取れるのです。

「テナントリーシング」に難航しておられるビルオーナー様の場合、ご自身の物件の「リーシング」営業の実態を把握されておられるでしょうか?
リーシングを依頼した先が「テナントリーシング」に詳しい先なのか、「住居リーシング」がメインの先ではないか、そういった視点で依頼先の「リーシングにおける得手不得手」をチェックしてみることも必要です。

「テナントリーシング」における募集活動のノウハウ、やり方が、「住居リーシング」とどのような点で異なるのか、といったことを具体的に知りたいビルオーナー様は、お問い合わせください。

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